第11話 夜は沈まぬ来たれよ乙女

買い出しを終えて一神亭に帰ると。

「ただいm」

「おっかえりー!」

「あっ、おかえりなさい。」

知らん奴が1人増えていた。

「…どなた様で」

「あ、この娘ね!さっき会ったんだけど一神亭に来

 たいって言うからさ〜」

「…物好きもいるもんだな」

彼女の顔が隠されているであろう仮面を半ば睨みながら溜め息をつく。

「え、えーとね?私が来たのは、これなんだけ 

 ど…」

そう言うと彼女は青い線と文字が書かれた書類を取り出し、それを俺に渡してきた。

「…『勇者の保護による一神亭の使用』…本気

 か?確かにウチは昔宿屋だったが」

確かにここは昔宿屋だった。そして、日本にしか勇者がいないことを考慮した上で、現状、唯一の『勇者保護施設』である。

「ここ以外に泊まるところがなくて。」

「…家は」

「追い出されちゃって」

ここまでくると嘘臭く聞こえてくる。だが、これが適応されないのは『申請者側が勇者かつ、保護者がいない、住む所がない』の3つをクリアしていい、例外にも適応されない場合のみなので、この書類が貰えた以上、家も親もいないのは明らかである。

「…勇者証明書は」

「はい、どうぞ」

彼女は腰につけた白生地のポーチのようなものから証明書を取り出す。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る