♡これって♡
唯華と口付けを交わす度に思う。自分の気持ちに嘘は吐けないのだと。見て見ぬふりはできるけれど、無にはできない。いつかは向き合わなければならないのだと思う。
早いか遅いかの問題。であるのなら、早く認めてしまった方が良いのかも。
私は……唯華が好き、なのだろう。
恋愛対象として? 幼馴染として? 親友として? 一人の人間として? どれが適切なのかはわからない。
けれど、好意は間違いなく持っている。この好意に気付いたらいけないと思っていたことを考えると、後ろめたさがあるのだろう。となれば、幼馴染としてとか、親友としてとかは考えにくい。
唯華とのキスを思い出す。濃厚で、熱くて、激しい。苦しささえあるのに、嫌だという気持ちは一切湧かない。むしろもっと欲しいと感じてしまう。疼くとでも言えば良いだろうか。
求めてしまうのだ。
ただの……なんの変哲もない好意を抱いているわけじゃないというのは明白だ。
人として、恋愛的に、唯華のことが好きなんだと思う。
認めるべきだろう。好きであると。
でも認めるのは怖い。
認めてしまったら歯止めが効かなくなりそうで怖い。恐ろしい。
一方的に恋心を抱くことになる。世間一般的に考えればおかしな恋心だ。
普通ではない。
唯華にこの気持ちがバレてしまったらどんな反応をされるのだろうか。気持ち悪がられないのなら良いけれど、変に気を遣われてしまう上に徐々に距離を取られるような気がする。
私にとってあまり都合の良くない未来が簡単に見えてしまう。
けれど、これはあくまで想いがバレてしまった時の話だ。
隠せればなにも問題はない。きっとこのまま歪な関係を続けることができる、はず。
認めても良い。恋心を抱いても良い。ただその先に進むことは許されない。
関係が壊れる。
それがなによりも怖いことだから。
今まで通り。現状維持。うん、そうだ。それで良い。なにも問題はない。一切ない。
「これで良いの。なにも間違っていない」
己の心に、脳みそに言い聞かせるように呟いた。
夜になればキスが恋しくなる。
いいやキスが恋しくなるのではない。唯華とのキスが恋しくなるのだ。
唯華とのという部分に価値を見出しているのであって、キスの部分に価値を見出しているわけではない。
キスをできれば誰でも良いわけではないのだ。
そんなビッチではない。
ぬいぐるみにキスをしても、胸の中にある虚しさは消えない。
ぞわぞわと波のように戻ってくる。
キフレという関係。
無意識のうちに依存していたのだと気付かされる。
ただキスをしているだけ。そう思っていたのに、違った。
唯華とのキスに依存して、それに救われていた。精神の拠り所にしていたのだ。
唇を撫でる。よりキスを欲してしまう。
キスをする時に感じる胸元の柔らかさ。鼻腔をくすぐる唯華の香り。唯華の舌の滑らかさ、味。すべてが私のことを包み込んでくれる。
快感を覚え、それを求めているのだと自覚してしまう。そうすれば、欲しいと願ってしまう。
依存だ。これを依存と呼ばずしてなんと呼ぶか。
ピッタリな言葉を見つけ、一人で微笑んだ。
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