【完】自由で、純白な旅路の当たり棒
糖園 理違
①
夏期講習帰り、照りつけてくる太陽から避難すべくコンビニに立ち寄って五十五円っぽちの棒アイスを買い食いした。
汗が嫌という程溢れて
『あたり』と書いてあるはずもなく、棒に
地震も風もないのに、と不思議に思っていると後方から地面を踏みしめるかのような重低音が響きだしていく。
徐々に大きくなっていく音に振り返ってみると、僕は見たモノの広大さに驚嘆して咥えていた棒を地面へと落としてしまった。
まだ味わっていたかったのに。
街を巨大ロボットが歩いている。
変わり続ける日常の中で、異質な、アニメのロボットがいた。
四肢は針にも似た異様なまでの華奢で、全身が貧相に見えるSFさながらの白い人型マシン。
アレは人類の平和を守る
下などお構いなさそうに歩いてはいるが妙なことに建物が崩壊している様子も無く、人々の絶叫すらも耳に届いてこない。
この異常な事態を撮ろうとスマホを取り出し、カメラを起動するが──
「ん? あれ?」
青空しか映らない。
何度も試すが視界にいるはずのロボットは、スマホだとその姿が映らない様になってしまっている。
撮るのを諦めて、僕は帰路の
前から来た自転車に轢かれそうになり、謝罪をするとまた空を見上げた。
すると、ロボットはビル群の中で停止していた。
夏の街中で静かに佇み──突然、胸を開いていく。
そこから何か立ち上がるも、遠すぎて点しか映らない。
目を細めながらも必死に観察すると、太陽を浴びながら何やら靡くものが見えた。
ロボットと同じ白色で……直感ながらこうにも思った。
「……人?」
靡く白色が髪によく似ている、だとしても人間が何故あんな所に?
思春期特有の想像を膨らませていると、白髪の人と共にロボットの姿は段々と景色に溶け込んで──巨躯は街の中へと姿を消してしまった。
非現実的な光景を目の当たりにして固まるも表情は無に戻り、家へと再び足を運んでいく。
こんなにも心が揺れているというのに。
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