写ルンですを現像する

 ハイ、このYouTubeチャンネルではみなさんのおうちに眠っている、何を撮ったのか全然思い出せない「写ルンです」を持ち寄って、カメラ屋さんに現像に出して、それから皆さんと一緒にワイワイと写真の内容を確認していくーーという企画をやっております!

 みなさんのおうちにもありますよね、「写ルンです」。

 この動画で初めてうちのチャンネルを知った若い人のためにちょっと説明しておきますとー、うちらが小学生の頃って、こういう使い捨てのフィルムカメラが千円くらいで売ってたんですね。

 じゃん! 見えますかー? 本当にカメラなんですよ、これ。ちゃんと中にフィルムもセットされてまして、フィルム一個分使い切るとそのままカメラ屋さんに持っていくんです。そうするとカメラの本体は現像と共にリサイクルに出されるんですね。だから千円で買えちゃうんです。今じゃ考えられないでしょー。ケータイにカメラついてなかったし、そもそもケータイ持たせてもらえなかったよね。ね? うんうん、そうなんです。だからうちらの小学生のときはこれで遠足とか文化祭とか運動会とかの写真撮ってました。

 コンビニとかでも売ってたとは思うんですけど、うちらはド田舎なのでー、コンビニ自体がなくってー。カメラ屋さんとかなら当然置いてあるし、あとスーパーとか。そう、スーパーとか駄菓子屋さんとかで、遠足のおやつを買うついでにこのカメラを買って、みんなで写真撮ってたんですね。

 でもね、忘れるんですよ、現像ー。たいていみんな楽しみにしてるからすぐに現像に出すんだけど、たまに風邪ひいて行けなかったりとかするともうずっと忘れちゃうんですね。タイミング外しちゃうと、こういうのは。だから、部屋の断捨離したらカメラが出てきて、うわ、何これ……でももう何撮ったのかもわかんないから現像する勇気ないぞってなって、また引き出しの奥にしまわれちゃうなんてこと、うちら世代にはあるあるなんですよね。

 今日はちょうど年末年始で帰省中なのでー、特別企画として小学生のときの友達に集まっていただきましたー。

 じゃん! プロゲーマーでゲーム実況Youtuberのまほろばくんです!

 まほろばくんは小学校ずっと、一緒のクラスだったんだよねー。うちも出てくるかな。出てきたらちょっとモザイクかけていい? ダメ? きっつー。あはは。……って言ってたらいきなり一枚目がうちですね。ちょっと待ってー不意打ちムリ。ムリムリ。なんで小学生のときのうち、こんなオンザ眉毛なん? あ、つい方言も出ちゃう。忘れて? ね、もうみんな忘れて? ほんとムリ。笑うしかない。ね。もうこうなったらまほろばくんの恥ずかしい写真も探してやろ。

 ……あー、二枚目のこれはフツー。うん、フツー。

 これ。集合写真ですね。懐かしい。

 あれ? でもなんかさー、うちらのクラスってこんな人数だったっけ? なんか、誰か足りないよね。誰だっけ。

 そういえば、あんまり……こういうことネットで言っていいのかどうかわかんないんですけど、誘拐事件があったんだよね。うちらの小学校。これってその事件の前? 後?

 あ、そっか。だからいないのか、■■ちゃん。あ、■■ちゃんってその、誘拐されて亡くなったクラスメイトなんですけど、さすがに名前は伏せさせてください。

 ……そっかー。だからかー……。


 え。何? どうしたの、まほろばくん。

 カメラ? カメラ止めてって、なんで?

 実はまほろばくんの恥ずかしい写真出てきたんだろ。あはは、止めないよ。出してそれ。隠さないでよずるいよー。

 ハイ、没収ー。


 …………え。え、待って。ムリ。ちょっと止めて。カメラ止めて。

 うちも無理。

 これってさあ……。まほろばくん、うちのことからかってる?

 うち、この間SNSで見たよ。なんか今AIとかで、マジ写ルンですで撮ったみたいなフェイク写真できるんだって。マジ騙されるって思ったもん。ねえ、まほろばくん、うちのドッキリのためにAIのフェイク写真混ぜ込んだやろ? そうやて言ってよ!


 すみません、生放送中に。生放送中でごめんだけど、ちょっと中断します。ごめんなさい。本当にごめんなさい。

 ちょっと……もう、なんなん、これ……。



(カメラから逃げるようにまほろばが握りしめている紙片には、死んだはずのクラスメイトの花嫁姿が写っている。その写真はまさに平成の安価なコンパクトカメラで撮ったような、薄暗いのに妙にテカリのある独特の質感をしている)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る