陰キャな私が何故か陽キャの仲間にされた件。私、そんなにスペック高くないよ。
榊琉那@屋根の上の猫部
いや、どう考えても私、場違いでしょ?
「ナオコ、すっごくいいライブだったね。また一緒に行こ♡」
「う、うん……」
地味なキャラを貫いている私、ナオコが一緒にライブを観に行ったのは、
会社でも有名な、これぞ陽キャの見本というべき娘であるシズカ。
普通なら出会う事のないだろう二人が仲良くなるなんて、
誰が想像出来るのだろうか?いや思わないって。
思えば昔から陰キャだったナオコ。
今はある会社の総務課でジミ~に仕事をしている。
小さい頃は親に厳しく躾けられていたなぁ。
習い事の定番である書道や珠算は当然習わされ、一時期はピアノも習っていた。
(まるで才能が無かったから、これは長続きしなかった)
当然ながら学習塾も通わされていた。
更に追加して茶道や華道までさせられそうになった時は、
これじゃ体がもたないと本気で親に抵抗したものだ。
そのような経緯もあり、他の子とは何か違うと思われて、
ちゃんとした友達関係を築く事は出来なかった。
変に捻くれた性格になったのは、親のせいばかりではないだろうけど。
結局、中学、高校と交友関係の少ない寂しい生活を送ったのだった。
当然、彼氏なんて夢のまた夢。大量の本が恋人だなんて悲しすぎる。
それでも成績はまずまず良かったから、そこそこの大学へと通うことは出来た。
今思えば、大学デビューするのもありだったかなと思えたが、
今更言ってもしょうがない。それは後の祭りというものだ。
無難に大学生活を送り、無難な会社に就職出来て、無難に仕事をこなしている。
それが今の私だ。自分でもそこそこ仕事が出来ると思っているし、
特に変化のない状況にいるけれど、まぁ特に不満はないと思う。
それに対してシズカはと言うと……
入社した時から広報課一番の美人と称され、ちやほやされていた。
誰が見ても可愛いと思える容姿にメリハリのしっかりとした抜群の体、
オマケに愛嬌が良く、誰とも仲良く接してくれる。
裏表のない明るい性格に加え、ちょっぴりドジっ娘要素まで持っている。
まさにザ・陽キャというべき人物だ。
当然、男性からの人気も高い。企画課のサユリと営業課のマリナと合わせて
三美神とも称されていた。この3人は仲も良く、3人が集まった時は
眩しさを感じさせるほどであった。
しかしながら、意外な事に3人とも男の影を感じさせないのだ。
誰とも付き合っているという形跡は見当たらない。やっぱり理想が高いのか?
それとも何か隠している事でもあるのか?それは誰も知らなかった。
そんな接点のなさそうな二人が出会ったのは、本当に偶然の事。
実はナオコには、他の人たちには言いずらい趣味がある。
ナオコは眼鏡をかけてクールな感じ、そして知的なイメージをしているが、
実はアニメオタクだったりするのである。
特にキャラが熱唱するシーンがあるようなアニメが好きで、
ケミカルライト持参でライブに行ったりする事も。
知っている人に見られたら、恥ずかしくて死んでしまうだろう。
その日は推しのアニメのライブイベントのDVDを買いに行くため、
アニメグッズを豊富に扱っている店へと向かっていた。
まぁ店舗独自の購入特典が欲しかったからだが。
「もしかしてナオコさん?」
目の前にいたのは、あの広報課のシズカさん。
「ど、どうも……。どうして私の名前を知っているんですか?」
「うん、結構用事で総務課に行ったりしてるんだよ。
ナオコさん、いつも仕事に集中しているよね。」
「はぁ……。」
まぁシズカが総務課にやって来た時は、男どもが騒ぐから
いつも仕事に集中するようにしてたけど、見られていたのは意外だった。
「いつ総務課に行っても一生懸命仕事しているから、何となく気になっちゃって。
それで今日って暇してるの?」
「ええと、特に予定はない……、かな」
しょうがない、DVDはまた今度取りに行こう。
遅くなり過ぎなければキャンセル扱いにならないだろう。
「よかったら、今からお茶しない?サユリもマリナもドタキャンしちゃって
一人なの。ねぇ、いいかな?」
「いいけど……」
「やったぁ、一度ゆっくりお話ししたいと思ってたんだぁ。ね、どこ行こう?」
シズカはナオコの両手を握ってブンブンと揺らす。
陰キャな自分にはどう反応したらいいかわからなかった。
「行きつけの喫茶店があるからそこで……」
「じゃあすぐ行こうよ。場所はどこ?」
ナオコは思わずお気に入りの喫茶店を紹介してしまった。
落ち着いて本を読みたい時に利用する、静かな雰囲気の隠れ家的存在。
たまたま見つけてからよく行っているが、何で人には教えないようにと
思っていた場所を教えてしまったのだろうか?
シズカの笑顔を見たら納得出来る気がした。
そのキラキラした笑顔は反則だよ。
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