ひみつの三人

黒井羊太

男が三人、謎の空間に集められた。

「おい」

「おいおい」

「おいおいおい」

 男たちはそれぞれを見て驚いた。お互いに初対面であったが、不思議とそんな気がしなかったのは普通では揃いそうもない共通項があったからであろう。

「一体ここはどこなんだ」

「分からん。何もないし、ここへ来た道もない」

「おいおい、冗談じゃないぞ。ようやくどこかしらにたどり着いたというのに」

 最後に呟いた男は、他の二人と比べても明らかにボロボロの服装であった。

「君はどうやら僕らのここに来るまでの経緯とはまるで違うようだ。僕は突然頭の中に『これを持って歩いていきたまえ』と言われて、気が付いたらここにいた」

「俺は暗がりに入り込んだらどこまで行っても暗がりで、二進にっち三進さっちもいかなくなって困り果てていたところこれが落ちていて拾ってここまで来たんだ」

「わたしは長い旅をしていた。ずっと一人で旅を続け、食料を調理するためにこれを持ち歩いている。そう何度も手に入れる事ができないものだからな」

 三人の話が出揃ったところで、謎は謎のままであった。




 それを別室で見ていた神と呼ばれる存在は誰に聞かれる心配もないのに笑いを必死に噛み殺しながら呟いた。

「松明を持った三人の男……火、三つの三人……なんつって!」

 神はダジャレが好物であった。

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ひみつの三人 黒井羊太 @kurohitsuji

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