2

今日は引っ越しの荷物をあらかた段ボールにしまい込み、余った物をまとめて置いた。

後輩を呼んでもし持っていけるものがあるなら持って行ってもらおう。

サークルに無理やり勧誘したひとりだが、なんとなく一緒にいるのが居心地がよく、

時々つるんだりしている。

赤い顔をしてやってきた。

どっかでビールでも飲んできたらしい。

まあ休みだし、それもありか。


最近アイドルにはまったらしく握手会とかにも初めて行ったという。

アイドルかあ。まるっきりわからん。

でもそいつの話は面白いからちゃんと聞いてやる。

女にはまったく縁のないやつで、奥手中の奥手だ。

なんどか風俗に誘ってみたが、とんと興味を示さない。

だからアイドルなんかにあこがれるんだろう。

純粋というかなんというか。

それでも人間は優しくていいやつだ。


今日は結局箱入りのバカラを持っていきやがった。

叔父からもらったものだ。

俺は家では飲まない。だから開けたこともないぐらいで要らないものだ。

売ればそれなりに金になったかわからんが、喜んで持って行ったし、よかったかもしれん。

下戸なくせに家でウィスキーとか飲むらしい。変わったやつだ。


ここもいよいろおさらばか。

ほんとは、くにと一緒に住む予定だった。

というかほぼ一緒にいたが。

俺が商売女にうつつを抜かしたら嫌気がさしたとか言って逃げ出してしまった。

金を払って女と遊ぶのはだめなのか?

まあいい。その話はもうおしまいだ。


女がいないとこうも間抜けな感じになるものか。

段ボールだらけの部屋を一通り見回して、さて、めしでも食いに行くか、と立ち上がった。

この街もしばらくは来なくなるだろう。

今まで行きつけの小料理屋ののれんをくぐった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る