第8話 女の子の本音

九頭龍珠緒くずりゅう たまおside】


 アタシを追ってきたのが、機動新撰組の一番隊 組長 沖田聡子おきた さとこで良かった。

 堅物の土方と違い話がわかる娘だからだ。


「約束だよ、花より団子和菓子喫茶店のクリームあんみつセットだからね !」


 幼馴染みの聡子だからこそ見逃してもらえた。

 教室に入ると埼玉美衣さいたま みい牛込カスミうしごめ カスミが迎えてくれた。


「やったね、ウチの勝ち。

 美衣、約束忘れ無いでよ !」


「うぐぅ、沖田ちゃんの裏切り者 !

 わたしのたい焼き返せ 」


 コッ コイツら、アタシで賭け事をしていたな !

 美衣は知らないけど、牛込カスミウッシーと聡子、アタシは幼馴染みだ。


「ウッシー、アタシに半分寄越しなさいよ !」

「ハイハイ。 クズちゃんは、アンコとクリームのどちらが良いの ? 」


「アンコは、つぶ餡それともこし餡 ? 」

「モチ、つぶ餡だよ !」


 美衣とアタシはつぶ餡派だ、だから答えは……


「アンコね !」


 たい焼きは、つぶ餡、クリーム餡、チョコレートと有ったらしく、ウッシーはチョコレートを確保していたのを後で知った。


 ◇◇◇


「ところで良かったの ? 美衣たち三姉妹も恭介くんのことが好きなんでしょう 」


 美衣は少し考えてから、


「う~ん、恭介のことは好きだけど……どちらかと言うとLIKEライクなんだよね。

 あっ ! だけど、愛ちゃんと舞ちゃんはガチのLOVEラブだからね !

 クズちゃんの邪魔はしないけど、味方もしてあげられないよ !」


 ライバルが一人減っただけでも感謝しないと。

 もちろん、クラスにも学園にもは居るけど、どうせなら可愛い男の子の方が良いに決まっている。

 それに、ウチのクラスの男どもは……

 チラリと固まって話ている男たちの顔は『◇撃の◌人』の巨人奇行種みたいな顔をしている。

 いくら女余りの時代でも相手くらいは選びたい。


「ねえ、ねえ、君ら、良かったらデートしてあげるよ。

 可哀想なモテない君らに慈悲を与えてあげる」


 粕谷剛かすや たけし鷺田脛夫さぎだ すねおが誘ってきた。

 誘ってきたのは粕谷の腰巾着の鷺田だ。


 バーロー、てめえらなんか100万円もらってもお断りだ !

 ブ男どもは家でシ◌れ ! 人外の存在が人間をデートに誘うんじゃねぇ !


 ……と心に思ったけど、口には出したりしない。


「ごめんなさい。 アタシ達、好きな人が居るからデートのお誘いには……」


 うつ向いて、恥ずかしそうな態度を取れば……


「行こ、行こ、シャイアン粕谷剛

 女の子なら、他にもいっぱいいるからさ !」


 あっさりあきらめて、他の女の子グループに向かった。


 バ~カ~、女の子だって選ぶ権利があるんだから、お前らブ男なんてお呼びじゃないんだよ !


 案の定、他の女の子グループからも断られた二人は隣のクラスに向かった。


「おーおー、必死だねぇ~。

 そんなに女の子からのが欲しいのかねぇ~。

 今頃、女の子の機嫌を取ったって手遅れだっつうの ! 」


 ウッシーの嫌味に、もうすぐバレンタインデーだと気づいたアタシ。

 ヤバい、女子力がウッシーより低いなんてバレるわけにはいかない。

 アタシは苦笑いしながら誤魔化すのに必死だった。

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