秘密
野苺スケスケ
第1話 秘密①
ガタガタガタ…すっごい貧乏揺すりと。
カチカチカチ…指まで食っちゃいそうなほど噛み続けてる爪。
前野は席に着いてからずっとこうである。
目を閉じたり開いたりそれでも一点を見つめる視線。隣の席の白石さんは得体の知れぬ恐怖に怯えている。
一体前野に何が起きたのだろう…
昨日の放課後 〜友也の部屋〜
「なー友也…知ってた」
ぶっきらぼうに前野が語りかける。
「知ってない…何?」
同じテンションで友也が返す。二人揃ってもう飽きるほど読んだ漫画を読み返している。静寂というより無の空間がそこにある。それに亀裂を入れる前野の次の言葉。
「一組の中野さん今日ノーブラだった…」
ガバッ!
ベットに倒れ込んで適当にとって開いていた漫画を放り投げ、腹筋の力だけで上半身を勢いよく起こした。そして、前野に詰め寄る。
「詳しく!…てか何それ!?お前いつから知っててなぜ今言うの!え!俺にどうしろと!想像だけしろと!それだけで抜けとでも!あ!でお前はそれを見たの!てかてか、それって何!ポッチ!もしかしてポッチ!え!まさか色付き!カラーですか透けてましたか!一体どうなのさ!あんたあの子のなんなのさ!」
ポッチのとこで友也は自分の指で自分のポッチを高速往復させていた。目を血走らせながら…。
やべぇ奴だ…と前野は思いながらも臆してはいけないと、冷静を装い言った。
「まぁまぁ落ち着きなさい…溜まってるんか?ネタなら教えてやる」
「まず、オレは見てない。放課後下駄箱で一組の奴らが話してたのを聞いた。その瞬間オレは走り出した中野さんを求めて…だがもういなかった」
ネタはけっこうだ…友也は小さく呟いた。そして続ける。
「お前…見たことあんの?」
言ってすぐ照れたようにアッチを向く友也。
「何を?」
前野が強めに聞き返す。
「お…」
そこから言葉が続かない友也。
少しの沈黙。友也が何を言いたいか察した前野は
「ないよ」
と一言。そして続ける。
「見れるなら誰がいい?オレは中野さん…」
言って恥ずかしそうな前野。
「以外としつけーなお前…」
と少し引く友也の言葉に熱を持って前野が反論する。
「違う!オレは奴らよりも先に行きたいだけだ。下駄箱で嬉しそうに話してたアイツらよりも先に!上に!そのためにはノーブラの中身を…す…すまん。で友也は誰よ…」
う…え…えほん!わざとらしい咳払いを一つ入れる友也。
「た…竹内…さん」
そう言った友也と数秒目を合わせる前野。
「えーー!オレの後ろの席の竹内さん!いやーまじか知らなかったぜ」
嬉しそうな前野…
昨日、親友の想い人を知った前野。そして今にいたる。
三時間目が始まる。席に急ぐ前野の腰が竹内さんの机にぶつかる。衝撃で竹内さんの筆箱が床に落ちる。慌てて謝りながらそれを拾おうと手を伸ばした前野の視線が捕らえたのはプリクラ…おそらく中学時代の竹内さんと…キスしてる知らない男…。
無言のまま筆箱を竹内さんの手へ収める。そして、自分の席に着く。一瞬、友也と目が合う。昨日の会話がフラッシュバックする。
知ってしまった。見てしまった。オレは…オレは…。言いようのない思いが心の中では収めきれず、身体から飛び出そうと揺れる。
ガタガタガタ…貧乏揺すりはいっそう激しさを増す。
ガラガラ…先生が教室に入って来た。先生は直ぐに前野の異変に気づく。
「な…なんだお前。大丈夫か?」
答えない前野。
(こ…怖えーー)
クラス中がこの思いで満ちる。
「おい!前野どうした!?」
先生が繰り返し聞く。
ガタガタ!前野が倒れた!
友也が前野のとこへ急ぐ。
「おい大丈夫か!」
「保険委員は?」
「は…はい」
竹内が小さく手をあげる。
「保健室まで頼めるか?」
尋ねる先生。すかさず友也が
「僕が手伝います!行こう竹内さん」
二人で教室を出て前野を保健室へと運ぶ。
ガラガラ…
「先生?いませんか?」
「せんせー?」
友也と竹内は交互に呼んでみたが返事はない。どうやら留守のようだ。友也は前野をベットに寝かせる。
「じゃオレ先生探してくる。竹内さん前野のことお願い」
「う…うんわかった」
友也は小走りで保健室を出て行く。
「前野くん大丈夫?」
語りかける竹内。
…
…
「彼氏?」
突然の言葉にビクッとする竹内。
「え?何?大丈夫なの?」
竹内の方は向かずに前野はもう一度聞く。
「さっきプリクラ見えた…一緒に写ってたの彼氏…?」
「え!見たの!?」
「ごめん…一瞬」
「う…うん」
どこか自信なさげに答える竹内。
「そ…そう」
それだけ言ってまた沈黙が流れる。
「したの?」
前野が沈黙を破る。
「…?」
意味がわからない竹内。
「したの?キスより先も…」
今度は意味がわかった竹内は
「なっ!!」
何言ってんの!と言いたげに少しだけ反応した。
答えない竹内に痺れを切らし竹内の方に顔を向ける前野。
少し赤くなった頬と俯く竹内。
前野は理解した。
気まずい空気。何故か負けてられるかという気持ちになった前野は
「エロ女!」
子供みたいな悪口を叫ぶ!
あっけに取られる竹内だったが、直ぐに言われた言葉を理解した。
「何よ!普通よ!私はエロくない!」
「いーやお前はエロ女だ!お前みたいな女は友也にはもったいない!」
何故か涙目の前野
「は!何それ意味わかんないんだけど、てか…」
そう言って言葉を止める竹内。
「なんだよ」
涙目を拭う前野が尋ねると冷たい視線の竹内が
「なんで勃起してんのエロガキ…きも」
ガラガラ…
「先生もうすぐ来るって」
笑顔の友也がかけて来た。
「どうしたお前たち?なんかあった?」
…
…
…
「秘密…」
二人揃ってそう答えた。
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