第19話

 やっとの思いでゲートをくぐり、僕らは更衣室の入り口で別れた。


 さすがは大手というべきか。

 中では、頑丈そうなコインロッカーが所狭しと並んでいた。

滑り止めなのか、床には学校のプールで見かけるようなプラスチックの板がしいてある。

 

 人混みを避け、なるべく空いていそうなロッカーを選んだ。

 と、通路を挟んだ向こう側で、見覚えのあるやつが着替えている。


 というか、長谷川だった。


 一瞬のうちに目があって気づかれ予感的中。

 気まずい沈黙が流れ出す。


「なんでお前がここにいるんだよっ!?」

「……それはこっちのセリフだっ!!」


 案の定、取っ組み合いになる。

 両者一歩も譲らない睨み合いの末、どちらからともなくため息が漏れた。


「お前絶対テールに近づくなよ!? なんかまた気まずい空気になるだろうがっ」

「そっちこそ! 絶対先輩に気づかれるなよ? 100パーセント面倒なことになるっ!!」


 言い合いの後、再びの沈黙。


「テール?」

「先輩?」


 続くセリフもほとんど同時だった。


「「あの人が来てるのか!?」」


 頭を抱える仕草さえ、双子みたいにシンクロしていた。

 マズイことになった。


 先輩というのは多分あの人のことだろう。

 長谷川の言う通り間違いなく面倒なことになる。


 二人を会わせてはいけない。

 両者の利害が一致したそのとき。

 長谷川のスマホに着信が来た。

 そして、僕のにも。


「テール? 珍しいな」



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