07 あ〜、勇者様きゃわ

 はぁ~、憧れのロイ様と一緒に資料館を見て回れるなんて素敵~!


 本当にエンペリオ家に生まれて良かったぁ……! ロイ様と二人っきりでいられるなんて……最高だよぉ……! ううう、めっちゃかわいいんだけど、だって、やばくない!?


 まつ毛なっが……! 本当に食べたいちゃいくらいきゃわなんですけど……!

 目がおっきい……かわいい、綺麗ぃ……。本当にたまらないんだけですけど!


 黒い髪の毛もさらさらなのに、癖っ毛で。え、さっき封印から目覚められたんですよね!? なんでそんなキレイなんですか!? 若返ってるのもそうだし、うわーーー、肌がモチモチしてる……でも、ちょっと痩せてる。いっぱいご飯食べてほしいー……っ!! 奢ってあげたい! 牛串食べた時に目がキラキラしてたの……はああああ、カメラを新聞社の人に言って借りて来ればよかった!! 惜しいことした!! エルフの使用人が持ってきた服もすっっっっっっごく似合ってるし! 庭で木剣で稽古してる姿とかを優しく見守っていたい……っ! 


 まって、ガルー。落ち着いて。勇者様は何がなんだか分かってない状態。

 王様にも言われたじゃない。混乱させぬように外を自由に見てきなさいって! 

 

「この後はどこに行きたいですか? 色んな所に行けますよ~。ガルー、どこだって案内します!」


 胸をとんっと叩いてそう言うと、ロイ様は下を向いたまま。


「……仲間は今、どこにいるんだ?」


 はあああっ! やっぱり、裏切り者を許さないんですね!

 仲間や家族には慈愛の気持ちで接し、敵や裏切り者は徹底的に罰する。

 それでこそ人類史に残る大英雄です! 伝説の勇者様ですっ!!


「そのお気持ち、わかります……! でも、アンスロを除いて、場所は分かってないんですよね……」


「ナモーの場所は分かってるのか!」


(わ、目が大きい……きゃわ……ッ!)


 思わず抱きしめたくなる衝動を抑え、手をわなわなとして欲望を外に逃す。

 落ち着け、ガルー。私は勇者の姪だぞ、常に冷静でいなければ。

 ……いや、無理! めっちゃきゃわ! あー、一緒の空気を吸えるだけでも幸せ!


「エルフはロイ様の封印石の件から消息は不明で、ドワーフは東の地にて同族をまとめ上げているという話を聞いてますねー。アンスロに関しては南東の地で王国を作り、そこの国王になっています」


 うん、よし。上手く説明できたぞ。って、ん?

 わっ、ロイ様、目が輝いてる! どうしたんだろう! 

 

 あ、手を、手を!? 手を握って、えっ、えっ!! わ、あったかい! あったかい! すごくあったかい! 子どもの体温って感じ──


「ナモーが国王になってるってのは本当なのか!?」


「は、はいぃ……っ! ほ、本当です! あ、王国とは上の人は認めてなくて……種族の大規模集落とみなしてるみたいですけど……」


「ナモーが国王に……」


 そういって顎に手をやって考え出した。えっ、悩む姿一つとっても様になってるのなに~!? もう、限界が近い……見るだけで罪悪感が湧くってなに? お金払わないと見ちゃダメな気がしてきたよぉ~! あああ、どこにお金払ったら許してくれますか……!? エンペリオ家にお金収めたらいいですか? それとも勇者様にお金を渡したら──


「…………ガルー。おい、ガルー!」


「ひゃ、ひゃいっ!」


 肩を持たれてびっくりしたけど、真剣な顔で一気に血糖値が上がった! 頭がクラクラする! 死んじゃうのかな! 私、死んじゃうのかなッ!!


「ガルー! 俺が封印されて、何年が経った? 数年じゃないだろ」


「え、何年って……」


 ──勇者様は封印から目覚めて、世界のことを何も知らんじゃろう。

 ──だから、混乱させてしまうようなことは言うのは控えるように。

 王様との話が頭をチラついた。


「あははー……数年です、そんな過ぎてないですよ」


「ごまかさずに教えてくれ。ナモーが国王になってるんだ。何年だ」


 肩を力強く握られ、男の子って力が強いんだな、と思った。

 男の子といっても、ロイ様だから、強いのは当たり前なんだけど、そんなに知りたいなら教えても……でも、国王様との約束で。


「知りたいんだ! ガルー!」

 

 ぐううううううう……! 知りたいなら、仕方ないですよね! 

 国王様よりも勇者様の方が断然かっこいいし、かわいいから!


「298年です!」


「──……」


「ロイ様が魔王に封印されてから298年経ってて」


 言うなって言われてたコトだけど仕方ない! だって、ロイ様がかわいいから!

 あとさっき真剣な目、ひじょーーにエッチです! 私が年下好きだったら終わってました!

 でも、私も298年経ってるって言われたら混乱するだろうなぁ……。


「う、ううううううう……」


 ロイ様はその話を聞いて、倒れるように膝を抱えて屈んでいた。あ、やっぱりそうですよね……言うべきじゃなかったかな。

 

「会いたい……みんなに……あいたい……」


「……!」


 勇者様……そんなに、思ってただなんて。

 298年と聞いて、真っ先に会いたいだなんて……。


(そんなに、王女様達のことを思ってたんですね……!)


 達ってことは稽古をつけてくれた剣聖や騎士団にも会いたいってことかな。さすが勇者様、義理堅いところも本当に良っ!!

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