第15話 謎の霧
「ここがその場所か」
「えぇそうよ」
アルファと二人連れだって報告に上がった場所に来ていた。
そこは一見すると何の変哲も無い霧の深い森の中といった感じであった。
だが、一目見て解る濃密な魔力。
それによって霧の結界が展開されているのが窺える。
「それにしても、これだけの結界を維持し続けるなんてどんな秘密がこの先に眠っているのやら」
「そうね。私達では霧の結界で方向感覚を狂わされて禄に探索が出来ない程だったわ」
「アルファでも難しいのか」
「だから、貴方を呼んだのよ。
どうにかなるかしら?」
「ま、取り敢えずやれるだけの事はやってみよう」
「こんな結界を何も探索しないで放って置くというのは気味が悪いしね」
そう言った後、私は魔力の糸を縦横無尽に張り巡らせていく。
「アルファ、私から離れない様に」
「解ったわ」
霧の中を進んでいく。
濃密な魔力によって作り出された認識阻害魔法により、肉体の方向感覚は禄に使い物にならない状態だ。
今信じられるのは、張り巡らせた魔力の糸を通して感じられる感覚だけ。
時間感覚さえも曖昧になる程の魔法の中を突き進んでいく。
アルファが私の魔力の糸を頼りにして着いてきているのを随時確認しつつさらに進んでいく。
すると霧が少しづづ晴れてきた。
暫く歩くと完全に霧は晴れそこには一つの都市が姿を現したのだった。
それは、現在の建築様式とは異なる様式美、そして見たことも無い建材で作り出された街並みであった。
しかし、そこには人の気配という物が全く感じられない…いや、一カ所莫大な魔力を隠しもせずに存在する一つの存在が察知できた。
「アルファ、気付いているかい」
「えぇ、これ見よがしに魔力を隠していないわね」
「まずはあそこに向かうよ。
それ以外に人影は見当たらなさそうだし」
「そうね」
ん?この地を訪れる事が出来る者が、この世界に生まれ落ちたのか。
いや、この感覚は…この世界の者では無いな。
まあよい、当初の予定通り私は動こう。
「ここだね、いくよアルファ」
「問題ないわ」
莫大な魔力を隠そうともしない存在が居る部屋へと到る扉へと手を掛ける。
するとそこには一人の男性が椅子に腰を掛けていたのだった。
「ようこそ、異界よりの来訪者とその従者と言ったところかな?」
私は動きを止めた。
私が異世界から来た事を理解している?
「ふふ、驚いている様だね。
異世界から来た事を知られたのは今回が初めてか」
「はい、その通りです」
「貴方」
アルファが声を挟んでこようとするがそれを遮る形で言葉が紡がれる。
「ん?その様子だと従者に伝えていないのだな?
先にそちらでその辺りの摺り合わせをするか」
「アルファ…」
「色々と気になるところではあるけれど、まずは目の前のあの人から話しを聞くべきと思うわ」
「ありがとう」
「ふむふむ、良い感じに信頼関係が気付けている様だね。
さて、ここまで来た君達には、私の都合に付き合って貰うよ。
その為に少し昔語りをしよう」
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