秘密の代償は秘密

一ノ瀬るちあ🎨

秘密

 悪魔が言いました。

「我が提供できる能力は一つだけ。相手の秘密を知ることができる能力だ」

 少女は言いました。でも、代償が高くつくのでしょう? 悪魔は笑いました。

「貴様が払う代償はたった一つ。貴様の秘密だ。貴様が秘密を知りたいと願った相手に、貴様もまた秘密を打ち明けることになる」

 なるほど。少女はうなずきました。

「どうする。我はかまわんぞ。別に、貴様が契約に応じずとも。他の誰かに取引を持ち掛けるだけだからな」

「わかった」

 少女が手のひらを差し出すと、悪魔はその口角を歪にゆがめた。

「契約成立だな」

 少女の手のひらに、不思議な文様が浮かびます。一対の蝙蝠の羽とも、真っ黒なハートマークにも見える文様です。

 少女は理解しました。もう、力は手に入っていると。

 だから、ためらいもなく発動しました。

「悪魔さん、あなたの秘密を教えて」

 先ほどまで楽しそうにしていた悪魔は、途端に白けた顔で悪態をつきました。

「お前みたいな勘のいいガキは嫌いだよ」

 悪魔は一方的に契約を破棄し、少女の前から姿を消しました。


 悪魔の思惑通りに、少女が力を振り回していたら、いったいどんなことが起きていたのか。


 それは、秘密です。

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秘密の代償は秘密 一ノ瀬るちあ🎨 @Ichinoserti

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