モテ男から告白されたはずの幼馴染だが、頑なにその返事を教えてくれない

越山明佳

モテ男から告白されたはずの幼馴染だが、頑なにその返事を教えてくれない

「なんの用だったの?」

「ん? なんのこと?」

「お昼休み、呼び出されてたでしょ。なんの話をしてたのかなって」


 嘘である。

 なにを話していたのか僕は知っている。

 登校途中で告白するという話を聞いていた。


 別に彼が僕に話していたわけではない。

 彼が友達に話してるのを聞いたのだ。


「ふ〜ん。本当はなに話してたか知ってるんじゃないの?」

「そ!? そんなことあるわけないじゃない」


 図星。

 だけど、悟られるわけにはいかない。


「ホントに〜」

「ホント! ホント!」

 バレてるとしか思えないけど自白するもんか。


「まぁ、別にいいけど」

 ほっと一息。


「まぁ、告白されただけだけど」

「結局、教えてくれるんだ」

「どうしたと思う?」

「え?」


「告白の返事。私はどう答えたでしょう」

「そんなの、わかんないよ」

「簡単だと、思うんだけどな」


 挑発的な彼女。簡単だと言われて躍起になる自分がいる。

「それで! なんて答えたの?」


 くるりとスカートを翻し、

「秘密」

 立てた人差し指を唇にあてている姿をかわいいと思ってしまった。


「どうして!? 教えてよ~」

「今こうしてるのが答えだと思うんだけどな」

「なにそれ!? 答えになってないよ」


 今してるのって。いつもしてることで。

 たぶんだけど、学校からの帰り道を一緒に歩いてることだと思うけど。

 でも、こんなの小学生の時から続けてることで。僕らは付き合ってるわけでもないし。


 高校生の僕らにとっては習慣みたいなもので。なにか特別な思いとかないと思うんだけど。

 そう考えながら彼女の横顔を見ると、ほくそ笑んでいて、それはなにか代えがたいものに感じた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

モテ男から告白されたはずの幼馴染だが、頑なにその返事を教えてくれない 越山明佳 @koshiyama

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ