第37話 変わらない関係
※
どのくらい時間は過ぎただろう?
舞花が飛び出してから、俺はこの秘密基地を動けずにいた。
「はぁ……」
吐きたくもないのに、溜息が漏れてしまう。
直後、そんな俺の気を逸らすように電話が鳴った。
もしかしたら舞花だろうか?
そう思いスマホを見ると、電話の相手は
俺たちのことを気にして、連絡をくれたのだろうか?
もしくは……何か舞花から連絡があったのかもしれない。
そんな期待を抱きながら電話を取ると、
「よう、どうだ?
ちゃんと仲直りできたか?」
どうやら、連絡した理由は前者だったようだ。
「いや……それが……」
「うん? どうしたんだよ?」
言い淀む俺の態度が気になったのだろう。
隠していても自体が良くなるわけじゃない。
俺は話せる範囲で舞花と何があったのかを説明した。
※
「……マジかよ。
状況、悪くなってんじゃん」
舞花から告白されたとか、話すことの出来ない部分は伏せた。
が、俺と舞花の関係が相当こじれたことは十分に伝わったようだ。
「まさか……俺もこうなるとは思ってなかった」
「それだと……謝って、どうにかなる感じでもないわな」
「やっぱり、そう……だよな」
俺の趣味は、舞花にとっては、絶対に受け入れることができないことだろう。
それは幼い頃のトラウマにもなっているのだから、当然だ。
それがわかっていたから、今まで伝えることができなかったんだ。
舞花が覚えているかはわからないけど、過去にも似たようなことが一度だけあった。
ここまであからさまな拒絶ではなかったとしても、その時のショックから俺も自身がオタクであることを隠していたくらいなのだから。
(……やっぱり、伝えるべきじゃ、なかったのだろうか)
いや、だがあのまま隠しておくという選択も、有り得ないように思う。
(……どうすれば、よかったんだろうな)
悩んでも、正しい答えなんてわからない。
わかるとしたらきっと、未来の話なんだと思う。
「オレらにできることがどれだけあるかわからねえけど……何かあったらいつでも相談に乗るからさ。
だよな、相楽」
「もちろん! だから優雅、一人で悩み過ぎないでよね」
電話の先から相楽の声も聞こえた。
ワーズから脱退した俺にも、変わらず二人は接してくれる。
「ほんと、心強いよ」
二人の存在が本当にありがたかった。
舞花との関係が変わってしまって、この先もずっと色々な物が変わっていくと思う。
でも、変わらないものだって、きっとある。
「舞花とのこと少しの間……見守っててほしい」
「おう」
「うん。二人ならきっと大丈夫だよ」
具体的にどうしたらいいかは、まだわからない。
後ろ向きになっていた気持ちが、二人のお陰で、少しだけ前を向くことができた。
だから今は、もう一度俺にできることを考えていこう。
このまま互いにしっかりと話しもぜずに、舞花との関係が終わってしまうのは、嫌だから。
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