秘密

@curisutofa

秘密

如何いかがかな?。お二方にとっては決して悪い話ではないと思われるが』


城伯ブルク・グラーフ閣下の御言葉に対して、会談に同席なされていられる上級の騎士シュヴァリエ様が御同意なされまして。


城伯ブルク・グラーフ閣下と男爵バローン閣下と同じく、帝国の君主であらせられる皇帝陛下より爵位を叙爵じょしゃくして頂き、貴族諸侯であらせられる皆様方の末座まつざに加えて頂けるのが長年に渡る宿願でした』


私の御主君であらせられる城伯ブルク・グラーフ閣下による御提案に対して、上級の騎士シュヴァリエ様が御同意なされるのは事前の予想通りでしたが。問題はもう御一方が誘いに乗るかです。


城伯ブルク・グラーフ閣下の御尽力もあり、私は既に帝国の君主であらせられる皇帝陛下の直臣の臣下の身分である帝国騎士ライヒス・リッターとして、二箇所の領地と領民を治めています。平民身分出身の私が、これ以上の立身出世を望むのは、分不相応ぶんふそうおうかと思われます』


金髪ブロンデス・ハールの悪鬼と呼び慣わされた、高名な傭兵ゼルドナーエンケルにして。祖父から血統により圧倒的な根元魔法の素質と魔力マナの容量を受け継がれた魔法使マーギアーいでもある帝国騎士ライヒス・リッター様の返答に対して。同じく魔法使マーギアーいにして、怜悧れいりかつ明晰な頭脳の持ち主であらせられる城伯ブルク・グラーフ閣下は微笑まれまして。


帝国騎士ライヒス・リッター殿は、本当に身の程をわきまえていられる若者であると、感嘆かんたんの至りだが』


ここで城伯ブルク・グラーフ閣下は、会談に同席なされていられる、帝国騎士ライヒス・リッター様の猶父ごふくんであらせられる男爵バローン閣下に、視線を送られまして。


わしに対する遠慮なら無用だ息子よ』


帝国騎士ライヒス・リッター様の猶父ごふくんであらせられる男爵バローン閣下は、天から授かりし根元魔法の素質のみを頼りに、単身にて異国から帝国に移住なされて、一代で御領地と領民を御治めになられる、貴族諸侯であらせられる男爵バローンの爵位を、帝国の君主であらせられる皇帝陛下より叙爵じょしゃくされた立志伝中の御方ですが。今の地位と身分を得られるまで、数々の苦労を重ねて来られた御方でもあります。


『私は猶父おとうさまとは異なり、幸運に恵まれただけの若輩者に過ぎません』


祖父譲りの瑠璃之青アツーア・ブラオの瞳を、猶父ごふくんに向けられながら御話になられた帝国騎士ライヒス・リッター様に対して。経験豊富な年長者であらせられる男爵バローン閣下は、優しい眼差しを向けられまして。


『運も実力の内だ息子よ。そしてそれを自覚してさえおれば、自らを見失う事は無い』


猶子ゆうしである帝国騎士ライヒス・リッター様に御話になられる男爵バローン閣下からは、血は繋がっていなくとも大切な御子息だと心底より思っている事が、会談の席で城伯ブルク・グラーフ閣下の護衛兵ライプ・ガルデを率いる女騎士リッテリンとして、警戒にあたる私にも伝わって来ました。


『…この会談の席で話し合い決定された内容は、実行に移すまでは秘密ゲハイムニスにして頂けますか?。城伯ブルク・グラーフ閣下』


城伯ブルク・グラーフ閣下による御提案に賛同するとの帝国騎士ライヒス・リッター様の御言葉に対して、私の御主君は他者に安心感を与える笑みを御浮かべになられまして。


秘密ゲハイムニス厳守をお約束しよう。帝国騎士ライヒス・リッター殿』

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