第30話 ガイルの依頼
「お願い、ですか? 内容にもよりますけど」
「いや、何、単純に冒険者ギルドの依頼を受けて欲しいってことだ。その、なんだ。君は古代魔獣を倒せるくらい強い。正直依頼なんか受けなくても資金面では大丈夫だろう。あれだけの魔石もある。ただ、それだと君の冒険者の等級が上がらないんだ。だから依頼もしっかり受けて欲しいなと」
「別に良いですけど」
依頼を受けて旅して周るなんてのもいいだろう。海外ですら行ったことないのに急に異世界なんて飛躍しすぎだけど、帰れないってだけで日本じゃないってことは一緒だ。
「でも、改めてそんなお願いするなんて、何かあるんですか?」
そう、俺としては別に依頼を受ける必要はあまり高くないような気がした。別に嫌という訳じゃないんだが、魔石を集めれば生活には苦労しないようだし、依頼の報酬の方が安そうなのは想像出来る。街を一つも二つも買えるような報酬がある依頼なんて無いだろう。
「いやな、これはこっちの話なんだが、やはり優秀な冒険者が所属しているギルドは名も売れるし、色々メリットがあるんだよ」
「異世界人であっても?」
異世界人は嫌われているとのこと。そんな嫌われ者でもメリットがあるのだろうか?
「当然その点に対して嫉妬する輩は多い。だが、純粋に強さへの憧れでもある。やはり高い等級の冒険者はそれだけで名誉になるんだよ。それは俺も元冒険者だから知っている。で、その高い等級の冒険者が所属している冒険者ギルドも一緒だ。冒険者ギルド協会の中での発言権も増すし、分配金も増える。まあそういう事だ」
ガイルさんは少し言い難そうに語った。冒険者ギルドの裏事情なんて俺には関係ないということを知っているからだろう。
「元冒険者だったんですね。ちなみにガイルさんの等級とやらは?」
「俺はA級だ。ちなみにその上のS級は世界で数えるほどしかいない。一応かなり強かった部類なんだぞ。ちなみにエレーナはC級だった」
なるほど。上から二番目の強さの等級だったのか。それでギルドマスターなのだからS級とやらがとても珍しいのは理解出来る。まあ、それ以外の要素がギルドマスターには必要なのだろうが、冒険者を束ねるならそれ相応の実績が無いとダメなのだろう。
「ちなみに俺の等級は?」
ギルドプレートには書いてあるかもしれないが、俺は読めない。ならば聞いてしまった方が早い。
「君は最低のJ級からのスタートにはなる」
まあ登録したばかりなら最低からのスタートは当然か。J級ということは11個は最低等級があるんだろう。中途半端なのは元々A級までしかなくて、S級は別途後から作られたのかもしれない。
「どうすれば等級が上がるんですか?」
「ああ、依頼をこなして報酬を得れば昇格試験を受けることが出来る。試験に受かれば等級が上がる」
なるほど、別に特に変わったシステムでは無いな。とりあえず普通に依頼をこなせば言い訳か。
「わかり……ました。俺も上の等級を目指してみます」
「ありがとう。通常、等級によって受けられる依頼は制限されるが、よほどの事が無い限り、君に関しては受けられるようにさせよう。とは言ってもこの街に限ってだが」
それは有難い。難しそうな依頼ほど高い等級じゃないと受けられなさそうなのはわかる。しかもそういう依頼ほど報酬が高そうだ。等級を上げやすくしてくれるガイルさんの配慮だろう。
「こちらこそ色々とありがとうございます」
俺は頭を下げながら答えるとほぼ同時に、部屋の扉がノックされる音が聞こえた。
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