第20話 エレーナとの会話②

「戦争ですか?」


 俺はこの世界に来てすぐに棄てられた。この世界の事情を全く知らない。シンシア様もアリアも魔の森から出ないのでわからないらしかった。

 よくよく考えれば平和な世界で紋章を持つ者の力を求めるなんてしないだろう。敵がいるから求めるんだ。敵は魔の者だけとは限らない。人間かもしれない。そもそも魔の者も含めて、絶対な正義なんてない。


「ええ、そうよ。そもそも貴方たちみたいな異世界人はこの世界の人たちがどう思ってるか教えてあげるわ。ただの兵器よ……」


 エレーナさんが深刻そうな表情でそう語った。兵器だなんて物騒だな。待てよ? 兵器ってことはもしかして、


「兵器ですか? ってそもそも人間扱いされてないってことですか?」


「そうよ。しかも、その力に溺れて色々な所で傲慢な振る舞いをする人も多いのよ。異世界人を忌み嫌ってる人が大多数ね。特に冒険者なんかそう。自分たちの獲物を横取りしてくんだもん。異世界人を敵視してる人ばっかり。だから咄嗟にあんなこと言っちゃったのよ。結果的にアリアちゃんを怒らせちゃってごめんね」


 アリアはまだじっと俯いている。でも、怒気はなく落ち着いているようだ。もう怒っていない、と信じたい。

 でも、なるほど。俺たちがこの世界の常識が無い異世界人だと思ったエレーナさんは庇ってくれたという訳だ。そのレベルやステータスなら魔物は倒せない。だから拾ったことにしなさい・・・・・・・・・・。そういう意味で何度も俺に拾ったよね? と尋ねたんだ。


「異世界人だって周りに知られないようにしてくれたんですね」


「ええ。私は以前、結果的に異世界人に助けて貰ったことがあってあまり嫌いじゃないわ。ま、運が良かっただけなんだけど」


「助けて貰った?」


 俺の言葉にエレーナさんは足を見て、スカートをすっと捲った。


「ええ、この時よ。魔物に襲われて仲間も死んでいく中、その魔物を倒してくれたのが、そう。ま、彼らも遺跡探索に来てただけだから、私の運が良かっただけよ」


「なるほど」


 思い出したくない話でもあるかもしれない。仲間が死んでいく光景、自分が殺されそうになる光景だ。俺も魔の森で殺されそうになったから少しはわかる。これ以上聞けないな。

 俺が黙っているとエレーナさんが思い出したかのように言葉を続けた。


「あ、そうそう。その時の話のことだけど、さっき回復魔法って言ってたでしょう。あれも異世界人だとバレるから気をつけてね」


「どうしてですか?」


「回復魔法は聖女しか使えない貴重な魔法なの。普通の人なら見た事も無いわ。どうも異世界人は気軽に使える魔法だと思ってるみたい、心当たりあるでしょう?」

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