異世界召喚に巻き込まれ最弱の役立たず扱いで棄てられた俺は、最強のステータスを手に入れたので異世界を気ままに生きます

織侍紗(@'ω'@)ん?

第1話 異世界転移

「な、なんだこれは……?」


 高校最後の二学期、中間テストも終わった。それから少しの日が経ち、肌寒く感じる日も多くなってきた、とある日、ホームルームが終わったので、教室を出ようと扉開けた俺は、有り得ない光景に驚いてそう呟いてしまった。

 そこにあるはずの廊下がない。代わりに中世の城のようなホールが目の前に広がっている。天井にはシャンデリアがいくつかぶら下がっており、真っ赤な絨毯が敷き詰められている。


 俺がビックリして振り向くと、クラスメート達も異変に気付いたようで教室の中がざわつきだした。

 何が起きたの? とか、窓の外が真っ暗! とか言っているようだった。パニック、とまではいかないが、かなりのクラスメートが混乱しているようだった。逆に驚きすぎて身動きすら取れない者もいるみたいだけども。


 しばらくすると教室の中に三つの人影が入ってきた。最初に入ってきたのは全身が鎧で覆われた騎士のような人だ。大きな剣を持っていて、その人への恐怖心からか、一瞬で教室が静かになった。二人目は俺たちよりも少し歳下であろう少女。お姫様のような姿をしている。サラリと伸びた金色の髪も高貴さを感じさせた。三人目は深くフードを被っていてよく分からない。占い師? とか、そういう印象だった。


「私は聖女アメリアと申します。皆様は私が召喚の儀でここ、プラトンの国に喚びださせて頂きました」


 真ん中に立つ少女がそう語った。

 え? つまりよく小説とかである異世界召喚されたってこと?

 俺は少し混乱しつつも、置かれた状況を少しでも理解しようと考えたのだった。


 しかし、クラスメートたちは全員が受け入れている訳では無いようだった。緊張と驚きからだろうか、泣き叫んでしまっている人もいた。


「アメリア……様と仰いましたか? 僕は加藤かとうと申します。質問しても宜しいでしょうか?」


 彼は学級委員長の加藤 康太こうただ。典型的な優等生タイプで、勉強は常にクラスで一番、校内でも大体トップの成績を取る。


「どうぞ」


 アメリアと語った少女はにこやかにそう答えた。


「召喚されたばかりで申し訳ないのですが、すぐに返して頂けませんか? 予備校の時間も差し迫ってますので。僕達は受験生なんです。今は大事な時期なんです」


 まあ、確かにその通りだ。俺もこれから図書室で勉強をしようと思ってたところだ。異世界召喚とかに憧れることもないことはないが、実際にこの身に起きると実に困る。でも……



「残念ですけど、返す手段はありません。皆様はこの世界で一生を過ごして頂きます」


 やっぱりね。

 俺の思った通りだ。大体こういう時はもう帰れないんだ。俺はそんな予感がしていたから、ショックは少ないけど、アメリアの言葉に教室はざわめいた。

 そりゃそうだ。いきなり帰れない、家族にももう会えないとか言われたら泣き喚いたりするだろう。それは仕方無いことだと思う。


 でも、アメリアはそんな俺たちのことなど意に介さず言葉を続けた。


「右手の甲をご覧下さい。紋章が浮き出ているはずです」


 その言葉を聞いて、俺は右手の甲を見た。確かに、今まで無かった模様がある。少し擦ってみるが、消える様子はない。

 周りを見渡すと、皆も同じような模様が右手の甲にあるのがわかる。


「貴方たち、異世界の方がこの世界にいらっしゃいますと、必ず紋章が付与されます。紋章ごとに違いはしますが、特殊な効果を与えてくれます。その力を我が国にお貸し下さい」


「断ったら?」


 俺はふとアメリアに尋ねた。力を貸せと言われてもホイホイと同意出来る訳はない。ただ、元の世界に帰れないこの状況で、断れば自由の身にしてもらっても少し困るけど。


「……他の国に渡す訳にはいきません。魔物が住む森に廃棄させて頂きます」


 自由の身よりも最悪だ。一介の高校生だった俺たちがいきなり魔物と戦える訳が無いだろう。実質死ねと言ってる様にしか聞こえない。可愛い顔してあっさりと非常なことを言うんだな。このアメリアは。


「半ば強制じゃないか!」


 この声は元野球部の山端やまはた 誠一郎せいいちろうだ。彼の言うとおり強制だとしか思えない。そりゃそうだ。従うか死ぬかどちらかを選べと言われているのと一緒だ。

 皆が黙り込んでしまったのもそう思ったからだろう。

 反旗を翻そうとしても、アメリアの横に立っている騎士はいかにも強そうだし、そんなことが出来そうにも思えなかった。


「そう仰って頂いても構いません。ただ、寝食はこちらで用意させて頂きます。勿論、活躍によっては給金も。力をお貸し頂ける方はこちらに並んで頂けませんでしょうか? 紋章の力を確認させて頂きます」


 アメリアはそう言って、フードを被った人物の前を指し示した。しかし、誰も身動きを取らない。いや、取れないと言った方が正しいかもしれない。重苦しい緊迫した空気が教室の中をどんよりと覆っていた。


 ガシャン!


 大きな音を立てて騎士が一歩前に踏み出し、剣を大きく振り被った。早くしろ、という意思表示なのだろう。焦った俺達は急いでフードを被った人物の前に列を作った。

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