第3章

第46話 生徒会特別監査の通達

 それから数日後の部室にて。

 俺はルミナとロゼッタに、急に生徒会から連絡を受けたことを告げた。


「2人とも悪い。今日は生徒会特別監査が入ることになった」


「生徒会特別監査、ですか?」

「わー、授業参観みたいー!」


「授業参観ならまだよかったんだけどな。なにせ監査だからな。いろいろとチェックを受けることになる、と思う」


「我が校の生徒会は、結構な権限を持っているって話ですよね。これは気を引き締めないとです」

「ふーん、そうなんだー」


「それにしても急ですよね?」

「ねーねー、魔王さまは、いつどこで監査をするって言われたの?」


「部活や同好会の長向けの学内ネットがあるんだけど、そこで監査に入るってつい今さっき通達があったんだ」


「あまりにも急……つまりこれは抜き打ち監査というわけですね?」


「多分な」


「もー! 抜き打ちでチェックされるとか、魔王さまってば何したのー?」


「いやいや、何もしてないからな」


「じゃあなんでー?」


「俺も理由がよくわからないんだよな。副会長が直々に見学に来るらしいんだけど」


「副会長、つまりナンバー2が直々にですか。それはまた仰々しい話ですね?」

「偉い人だ~! ってことは、やっぱり魔王さまがなにかしたんでしょー?」


「うーん……正直、思い当たる節はないんだよなぁ。放課後はかなりの頻度で集まって読書会や感想会をしているし、ロゼッタを中心に執筆も始めている。メンバーの最低人数の3人もクリアできているし、秋の文化祭までに提出物を出しさえすれば、問題はないはずなんだが……」


「部室の鍵だって返し忘れたことはありませんよね」


「そりゃ顧問の先生はいないし、グダグダと駄弁って何もしない日もあるにはあるが。客観的に見て、俺たちはかなり真面目に同好会活動をしていると思うんだ」


 わざわざ副会長が直々に視察に来るようなことは、何もしてないはずなんだがな。


「そういえば生徒会副会長というと、たしかこの部室を割り当ててくれた先輩ですよね? もしかしてそれが問題になったのではないでしょうか?」


「新しい同好会にいい部室を与え過ぎたってことか。なるほど、ありえなくはないな」


「えっとー? どういうこと?」


 既に話から脱落気味のロゼッタに、俺は分かりやすく説明する。


「今でこそ廃部になってはいるが、天文部は学校創設当時からある由緒ある部活なんだ」

「星は綺麗だもんねー」


「……今はそれは関係ないかな」

「えー」


「で、そんな由緒正しい天文部の部室を引き継いだのが、怪しげな名前を冠した同好会だったから、副会長がこの部室を与えた判断が間違っていたんじゃないかって、生徒会内部で問題になっているのではと、ルミナは推察しているんだよ」


「……あ、うん。なるほどねー! うんうんー」


 おまえ、絶対に分かってないだろ。

 これ以上は説明する時間もないから、もうそれでいいけどさ。


「ともあれ。急だけど、もう少ししたら副会長が来るから、粗相のないような。特にロゼッタ」


「魔王さま、『そそう』ってどういう意味だっけ?」

「失礼な言動はしないでってことだ。頼むぞ?」


「はーい! わたしそういうの得意だから任せて~」

「……」


 もしかして得意、って言った?

 俺の聞き間違いじゃない?


 そう……。


 既に120%不安しかないが、これ以上言っても意味がないのは分かっているので、とりあえずこの話はここで終わろう。


 などという会話をしてから数分後。


 コンコンとドアがノックされて、


「おっ、みんな揃っているみたいだね。こんにちはと、初めまして。アタシは鬼藤きとう星奈せな。今年度の生徒会副会長だ。よろしくね」


 生徒会副会長・鬼藤星奈先輩が魔会の部室へとやってきた。

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