第36話「勇者と魔王が同じ同好会だなんてロマンチックですよねっ」  いっやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ────っっ!!

「本当ですか? 良かったです。『魔王と異世界ファンタジーについて考える会』でしたよね? 結構、本格的な感じの名前だったので、断られるかなってちょっと不安でしたから」


 ホッとしたように、ルミナが小さくはにかんだ。


 おいおい、そんなに心配するような場面でもないだろう?

 学校で一番人気のあるルミナの入部を断るやつなんて、魔王以外にはいやしないっての。


 だからこそ、魔王でないことをアピールするためにも、ルミナの同好会入りは甘んじて受け入れなければならないわけだが。


 ま、つまりだ。

 この辺りのことはお互いに全部わかったうえで、白々しい友だちごっこを演じているというわけだ。


 俺もルミナに負けないように、ルミナの友達を演じきって見せよう。


「あはは。名前はたいそうだけど、実際はラノベを読んで感想を言ったりするだけだからさ。断るとかはないよ。強いて言うなら、秋の文化祭に向けて、ラノベ1冊分くらいの小説を1つは書きたいなって思っているくらいで」


「感想会に、オリジナル小説の執筆。いいですね。すごくアオハルで、とっても楽しそうです!」


 ルミナが顔をほころばせながら、胸の前で両の手のひらをポンと合わせた。

 ルミナの感情表現豊かなところは、すごく可愛い。


 ……いやいや、もちろん演技ってことはわかってはいるからな?

 一瞬ドキッとしたとか、見惚れてしまったとか、そういうのは全然ないんだからな!


「そういやルミナってファンタジーに詳しいんだよな? 即戦力として期待させてもらうぞ?」


「あー……と、実を言うとそこまでは……」

「そうなのか?」


「もし体育館裏でのことを言っているなら、忘れてください。あの時は勘違いとか思い込みとか早とちりとか、いろんなことが合わさって、マオくんには迷惑かけちゃいました」


 勘違い、思い込み、早とちり、ね。

 とかなんとか言って、俺を油断させようとしているんだろ?

 悪いが俺には全てお見通しだ。

 その手には乗らないぜ。


「あ、そうだったんだ」


「でもでも、入るからには全力で頑張りますから!」

 ルミナがグッと拳を握った。


「あはは、同好会なんだからそんなに肩肘張らなくていいよ。プロ作家になろうとかそういうのじゃないからさ。もちろん目指すのは自由だし、応援するけどね」


 さて、お気づきだろうか?

 俺がいつにもまして積極的にルミナと会話し、逆にロゼッタにはまったく話を振っていないことを。


 ふふふ。

 俺がルミナと1対1で会話をしていれば、その間はロゼッタが失言をすることはないのだ。


「マオくんはこういっていますが、ロゼッタさんもそれでいいでしょうか?」


 と、ここでルミナがロゼッタに話を振った。


 くそっ。

 ロゼッタに話を振られないように、さりげなくロゼッタを俺の背中に隠してルミナから見えづらくしたりと、懸命にブロックしていたのに!


 やはり魔会に入る最大の狙いはロゼッタか!

 どう考えても俺を直接攻略するより簡単に落とせそうだものな!


 頼むから失言しないでくれよ、と俺は普段は信じていない神様に、心の中で必死に祈った。


「遊佐さんが入ってくれたら嬉しいですぅ」


 そうだ、それでいいぞロゼッタ!

 今はルミナを受け入れざるを得ないターンだ。

 よくわかってるじゃないか、見直したぞ!


「ほんとですか? 良かったです」


「勇者と魔王が同じ同好会だなんてロマンチックですよねっ」


 いっやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ────っっ!!

 全然ちっともこれっぽっちも、1ミクロンもわかってねぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!!


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