サレ妻
佐々井 サイジ
第1話
ふう。やっぱり男の体が重いな。こいつ結婚してから十キロ太ったって言ってたっけ? さすがに一人で運ぶのはしんどかったな。ちょっと腰曲げるだけでじんじんする。手首も腱鞘炎みたいになってるし。椅子に手足を縛るときも手首に電流が走ったようなかんじになった。まあいいや。
はあムカつく。さっさと起きろっての。ああ起きたら起きたでうるさいな。髪の毛むしり取られたくらいでギャーギャー騒がないでよ。ブチブチ抜けた気味悪い感触が伝わった私の方が叫びたいわ。こっちはただでさえ疲れてんのにさ。どういうつもりだ? それはこっちのセリフだっつうんだよ。私、言ったよね。「もう一回浮気したら、拷問するからね」って。あれ、冗談だと思ってたの? そんなわけないじゃん。浮気されてどれだけ心が痛んでると思ってんの? どれだけ精神的苦痛を味わってると思ってんの? 一回目のときに同じこと言ったよね。アンタ土下座して何度も謝ったから許したんだけど全然わかってなかったじゃん。性欲に忠実なアンタには口で伝えてもわかんないよね。だから今日は「私、これくらい辛いです」っていうのを物理的に味わってもらおうと思ってるから。
だから私、アンタを運んで怠くなった体に鞭打って拷問するんだ。例えじゃないよ。ほら、背中のここ、ミミズ腫れしてるでしょ? アンタが寝てるときに気合の一発入れといたから。私、頑張るね、拷問。
騒ぐな。心配しないでよアンタには鞭使わないから。こんな生ぬるいのじゃ私の痛みわかるはずないから。拷問だから質問していくよ。じゃあ最初に、アンタの浮気相手の名前、「
よし、じゃあいくよ。……やっぱり小指でも切るの大変だね。一応骨があるから当然か。よし、切れた。うるさいなあ、けっこう血が出るんだね。うわ汚っ。小指切ったらゲロ吐くの? 臭いんだけどマジで。やめてくんない?
拷問続けるよ。こんなんで死んだらマジで殺すよ。堀尾佳純は会社の後輩だよね。住所わかってんの? 「それを聞いてどうするつもりなんだ」って、そりゃアンタと同じことするに決まってんでしょ。何ソイツのこと守ろうとしてんのムカつく。右手の残りの指全部ちょんぎっちゃお。
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