197 戦利品の鑑定結果


 鑑定を続けること数時間、ようやく終わりがやってくる。



 名称:やる気の槍

 説明

 装備中、なんだかやる気が湧いてくる。



「これはゴミだな。処分しよう。よし、これでやっと終わった」


 鑑定したほとんどが、個人的には必要の無い物だった。


 それらは後で、女王に差し出すことにしよう。


 こんなのでも、ダンジョンを運営するポイントに変換できると思われる。


 それと魔道具だが、生活魔法で補えるものばかりだった。


 飲水や火種、光球などが大部分をしめる。


 あとは数こそ少ないが、生活魔法の清潔を発動する魔道具もあった。


 もちろん俺には必要のない魔道具だが、念のため一通りは確保しておく。


 いずれ、何かに使えるかもしれない。


 あとはおそらくだが、性的欲求を解消するための魔道具が結構あった。


 これは当然、処分する。


 それと一応触れる前には、何度か清潔を発動しておいた。


 これを女王に渡すのはなんだか気が引けるが、ポイントに変換すればそれも関係ないだろう。


 ちなみに俺はこの世界に来てから、性的欲求をおそらく感じたことがない。


 たぶん、デミゴッドの種族が関係しているのだろう。


 子供を作ることは可能かもしれないが、寿命が無いのでそうした欲求がとても薄いのだと思われる。


 そういう訳で、こうした魔道具は今後も必要は無い。


 まあそもそも何だか汚い感じがするので、そうした欲求があってもこれは処分したことだろう。


 そんな感じで、魔道具は不必要なものが多かった。


 しかし、使えるものが無かった訳ではない。


 数こそ少ないが、俺が確保した魔道具の一部を改めて確認しようと思う。


 

 名称:魔除けのくさび

 説明

 魔力を込めて突き刺した場所を起点に、不可視の結界を作り出す。

 結界の外から干渉されるあらゆる索敵系スキルから逃れる。


 ◆


 名称:魔法の鍵(中級)

 説明

 使用することで、中級開錠の効果を発動する。 


 ◆


 名称:契約のスクロール (五枚)

 説明

 お互いの合意の元、契約の呪いを発動する。

 呪い耐性(大)まで無効化する。


 ◆


 名称:魔法の天幕

 説明

 空間が拡張された天幕。

 魔力を流すことで、一瞬にして完成する。

 この天幕は時間経過と共に修復されていく。


 ◆


 名称:追想のスケッチブック

 説明

 思い出した記憶を元に、絵が描かれる。

 魔力を流すことで、新しいページを生成する。



 どれも役に立ちそうだが、特に追想のスケッチブックが面白い。


 手に持ってレフを思い浮かべると、真っ白な用紙にレフの絵が浮かび上がってくる。


 色もついており、とてもリアルだ。


 記憶が正確であればあるほど、絵のクオリティが上昇する。


 なので直近の記憶や、直接対象物を見ながら使うのが良いかもしれない。


 俺はこれからも旅を続けると思うので、印象に残った場所や人物は、定期的に絵に残そうと思う。


 またこのスケッチブックは、上限が百枚みたいである。


 ページは魔力を流せば増えるみたいなので、ある程度絵が溜まったら切って冊子にすることにした。


 ストレージに収納すれば、場所は取らないし問題ない。


 俺がどれだけ旅を続けるか不明だが、これはきっと大切なものになるだろう。


 できれば、もう少し早く手に入れたかった。


 この世界に来て初めて出会ったベックたちの顔などは、もうあまり精細に思い出すことができない。


 であればいずれ大陸間の召喚転移が可能になった際に、もう一度会うことにしよう。


 その時に、絵に残せばいい。


 なんだか先のことを想像したら、少し切ない気持ちになった。


 寿命のないデミゴッドは、交友を深めた人たちと本当の意味で別れることになる。


 幸いなのは、カード化した配下たちもおそらく寿命と無縁かもしれないことだ。


 まだこの世界に来て一年も経っていないので分からないが、何となく配下も老いない気がする。


 完全な孤独にならないことが、唯一の救いだろう。


 少し、話が脱線してしまった。


 話を戻そう。


 そういう訳で、このスケッチブックは今後重宝するはずだ。


 大事に使っていこうと思う。


 また魔道具は他にもいくつか確保しているが、それらは使う時に効果を確認すればいいか。


 念のために確保した物がほとんどだし、このまま使わずに終わることもある気がする。


 とりあえず、魔道具についてはこんな感じだ。


 続いて装備についてだが、こちらは元々数が少ない。


 これは基本的に、侵入者たちが決まった同じ装備を身につけていたからだ。


 装飾品や武器は多少あったが、防具については無いに等しい。


 更にその中から欲しい物となると、本当に僅かだ。


 加えて価値のありそうな装備の多くは、登録者以外が使用できない効果がついていた。


 これは以前俺がハパンナダンジョンで手に入れた、収納リングにもあった効果である。


 どうやら本人が死亡していても登録は解除出来ないようであり、手の施しようがない。


 なので登録者が登録されている装備については、諦めるしかなかった。


 しかし気になるのは、似た装備でも登録者を設定できる効果があるものと、無い物があることだ。


 似たような装備でも個別に差があるといえばそれまでだが、もしかして登録者を設定できる効果を後付けするスキルや、魔道具などがあるのだろうか?


 頻繁に見かけるものではないので、簡単には出来ないのかもしれないが、可能性はゼロではないだろう。


 金持ちや貴族なら、装備にそうした対策をしてもおかしくはない。


 そんなことを思いながらも、俺は確保した装備の効果をいくつか再度確認をすることにした。



 名称:癒しの腕輪

 説明

 ・適性があれば装備中に限り、スキル【ヒール】【キュア】が使用可能になる。

 ・この腕輪は時間経過と共に修復されていく。


 ◆


 名称:鑑定のモノクル

 説明

 ・適性があれば装備中に限り、スキル【鑑定】が使用可能になる。

 ・このモノクルは自動装着される。

 ・このモノクルは装備する者のサイズに調整される。

 ・このモノクルは時間経過と共に修復されていく。


 ◆


 名称:疾風のバンダナ

 説明

 ・装備中に限り、スキル【加速】【風属性耐性(小)】を得る。

 ・このバンダナは装備する者のサイズに調整される。

 ・このバンダナは時間経過と共に修復されていく。


 ◆


 名称:万能の鞍

 説明

 ・装備中に限り、スキル【騎獣】を得る。

 ・この鞍は自動装着される。

 ・この鞍は装備する者のサイズに調整される。

 ・この鞍は時間経過と共に修復されていく。


 ◆


 名称:理性の首輪

 説明

 ・装備中に発生したいちじるしい精神の起伏を抑え、理性的な行動を可能とする。

 ・この首輪は装備する者のサイズに調整される。

 ・この首輪は時間経過と共に修復されていく。


 ◆


 名称:猛毒の指爪

 説明

 ・一定の確率で、対象に猛毒の状態異常を与える。

 ・この爪は装備する者のサイズに調整される。

 ・この爪は時間経過と共に修復されていく。


 ◆


 名称:麻痺の指爪

 説明

 ・一定の確率で、対象に麻痺の状態異常を与える。

 ・この爪は装備する者のサイズに調整される。

 ・この爪は時間経過と共に修復されていく。



 確保した装備のこれらは、俺用ではなく配下用だ。


 中々良い物が手に入ったと思う。


 あとは能力を上昇させる指輪やバングルなどを、一応確保している。


 この装備を一通り身につければ、かなり強くなることだろう。


 他にはもしかしたら使うかもしれないという装備も、手に入れていた。


 現状は不要なので、しばらくはストレージの奥底に眠ってもらう。


 それとストレージといえば、収納系スキルは持ち主が死亡するとその中身は消失する。


 つまり侵入者たちの持ち物は、そうした理由からいくつか消失していた。


 もったいないが、仕方がない。


 一人一人スキルの所持を確認して、なおかつ自主的に中身を全て出してもらわなければ、収納物が手に入ることはないだろう。


 それは、途方もなく面倒な事だ。


 しかし捕らえた五人の中に、収納系スキルを所持している者がいた。


 シャーリーはどうにかして、そいつから収納物を吐き出させたみたいである。


 他にも本人登録をしてある収納系魔道具から、自主的に出させたらしい。


 いったい、どのような拷問をしたのであろうか。


 気になるが、訊くのは何となく止めておこう。


 ちなみにそいつらが出してくれた物の一部が、先ほど紹介した物の中に含まれている。


 なので今後もし収納系スキル持ちなどを捕らえた場合は、シャーリーに差し出そうと思う。


 そして今更だが、手に入れたものは装備品や魔道具だけではない。


 金銭はもちろんのこと、スキルオーブもあった。


 微妙なものから使えるものまで、幅広い。


 使えるものは確保しておき、あとで装備と一緒に配下にスキルを習得させようと思う。


 もちろん、必要なら俺もスキルを覚えるつもりだ。


 今回の襲撃は、予想以上に良い収穫になった。


 そう考えるとまた来てもらいたくなるが、調子に乗ると痛い目に遭うかもしれない。


 あと女王が言っていたが、今回のような大規模な襲撃はこれまではめったに無かったとのこと。


 だが現状小規模国境門が乱立しているので、これからは分からない。


 なので、今回以上の大規模な侵略がある可能性もあった。


 あの強者四人に匹敵するか、それ以上の存在が大量に現れれば、流石に不味いかもしれない。


 だがまあ普通に考えれば、そんな強者が大量に現れる可能性は低いだろう。


 今回のように、僅かな強者とその他大勢になるはずだ。


 けれども世の中に絶対は無いので、備える必要はある。


 守護者として、与えられた仕事は完璧に熟さなければいけない。


 万が一にも女王の前に敵が現れる状況を、作るわけにはいかないからな。


 そう思いながら不必要な装備を引き渡すため、俺はシャーリーを呼ぶためのベルを鳴らすのであった。


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