第六章
196 得られた情報の一覧
お待たせいたしました。
本日より、第六章をスタートします!
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「こちらがリストになります」
「ああ、助かる」
「では、御用がありましたら何なりとお申し付けください。失礼いたします」
そう言って半透明なメイド、シャーリーが退出していく。
あれから話し合いが終わり、現在俺は与えられた客室にいる。
お互いについてより知ることができ、ダンジョンについての知見も得られた。
その詳しいことについては、今は置いておく。
それよりも、このリストの内容の方が重要だ。
俺はシャーリーから受け取ったリストを、ゆっくりと確認していく。
……なるほど。あいつらは宝珠を持っていないのか。
シャーリーに渡されたリストには、捕らえた五人の情報が書かれている。
当初は俺が直接情報を訊きだそうと思っていたが、こうしたことはシャーリーが得意のようだった。
なので代わりに、情報収集をしてもらった感じである。
いったいどのような訊き方をしたかは不明だが、シャーリーの顔がやけにツヤツヤしていた気がした。
半透明だった体も、若干濃くなっていた気がする。
ぱっと見は長い金髪と碧眼をした美女であり、半透明でなければモンスターには見えない。
しかし実際は、Bランクモンスターで城の守護者の一人でもある。
きっと訊き出された五人は、悲惨な目に遭ったのだろう。
何となく、そんな気がした。
まあ捕らえた五人については、どうでもいいか。
重要な事は、概ねここに書かれている。
言語理解のエクストラがあるので、文字についても問題なく読むことができた。
それにより、あの襲撃の全容が明らかになる。
まずどうやら、この城を見つけたのは偶然らしい。
宝珠に導かれたわけではないようだ。
そして発見者がドヴォールたちを見て、ダンジョンだと判断したと書かれている。
あとはそれを知った上層部の中で誰が指揮をするかでもめたり、人員集めや物資の調達にそれぞれ勤しんだとのこと。
その中にはあの強者四人、Sランク冒険者もいる。
彼らにはかなりの金銭を払い、雇ったようだ。
ダンジョンボスの討伐や、不測の事態に備えての事らしい。
まあ実際転移者を除けば、これまでの敵の中では一番強かったかもしれない。
Aランクのモンスター三体とアンデッドの物量で、完封したに過ぎないからな。
奥の手もあったかもしれないし、あの戦いはあれで良い結果になったと思う。
それとこの城の場所についてだが、侵入者たちの本国に知られているようだ。
当初は未帰還ならより強力な軍がやって来ると、捕らえられた者たちは言っていたらしい。
だが実際にはSランク冒険者を加えた軍が未帰還となれば、割に合わず放置される可能性が高いようだ。
それが分かっていたからか、すぐに言葉の勢いは無くなり従順になったとのこと。
逆に国境門から現れた別の国の者たちに、この城の情報を売るかもしれない。
なのでどちらにしても、このダンジョンに再び侵入者が現れる可能性があるみたいだ。
俺としては戦闘経験を積めるし、報酬も手に入るので歓迎するところではある。
そしてリストの続きには捕らえた五人の持っていた物や、野営していた場所にあった物が細かく記載されていた。
うーむ。ほとんどは必要の無い物だな。
いくつか気になる物を残し、他は女王に譲渡しよう。
侵入者の死体や持ち物は、ダンジョン内で様々な用途で使用できるポイントに変換できるらしい。
俺を守護者にした時に、どうやらこのポイントの大部分を使ってしまったようだ。
ダンジョンの一部縮小や、俺への制限はこれが関係している。
なので出来る限り、このポイント稼ぎには協力しようと思う。
故に報酬でもらった聖金貨だが、大部分を女王に渡している。
この聖金貨も、ポイントで作り出したもののようだ。
であれば逆に、ポイントに変換することも可能だろう。
その時の変換レートは不明だが、二重取りの分も渡したのでかなりのポイントになったと思われる。
当初は女王も受け取りを拒否したが、優先的にポイントを俺に使ってもらうことで合意してくれた。
現状金銭の使い道が無いので、投資することにしたのである。
目下の願いは、ダンジョン外で活動ができるようになることだ。
実は宝珠のある場所の一つは、既に発見済みである。
俺としても、このままじっとしている時間がもどかしい。
なので女王はそのために、今必死に調整してくれているみたいだ。
ただアンデッドなので肉体的な疲労はしないが、精神的な疲労はあるとのこと。
急いでほしいところだが、無理をしない程度に頑張ってもらいたい。
それとヴラシュには、あることをお願いしている。
とても張り切っていたので、いい結果を出してくれるだろう。
ちなみにエンヴァーグは、女王の側にいる。
ダンジョン内は安全だとしても、常に護衛として側にいることを心がけているようだ。
またドヴォールとザグールは、ダンジョンの外を見回っている。
二人はダンジョンから一定距離を離れられないとはいえ、ダンジョンの外に出ることが可能だ。
なので何者かが潜んでいないか、目を光らせている。
生命探知は生命感知ほど万能ではなく、範囲も狭い。
知らずの間に情報収集をされて、侵入者たちがやってきたことを気にしているようだ。
しかしダンジョンとしては侵入者が現れることは必要な事なので、女王もそこまで気にする必要はないと言っていた。
加えてダンジョンは侵入者が来なくてもポイントを増やす方法があるらしいが、現状の収支はマイナスらしい。
おそらく、俺が守護者になったことが関係している気がする。
守護者と任命しているだけで、定期的なポイントの支払いが発生しているのかもしれない。
だとすれば侵入者が多く来る方が、ダンジョンとしては良い事になる。
いずれ小規模国境門は閉まるので、場所を知られていても何とかなるだろう。
ちょうどその時に、俺との契約も終了する。
なら俺がいる間は、逆に侵入者を招き入れるのもいいかもしれない。
まあどちらにしても、それについて決めるのは女王だ。
そうしたことも可能だと、提案だけはしておこう。
しかし宝珠の事もあるので、しばらくは待ってほしいところでもある。
それも踏まえて、話してみることにしよう。
忙しくなって宝珠集めができなくなってしまえば、本末転倒である。
さて、少し脱線したが、リストについてはこんなところか。
他には捕らえた五人の個人的な情報も書かれているが、これについてはどうでもいい情報だ。
流し読み程度にしておく。
その後女王に譲渡する物について、再度シャーリーを呼んで伝えておいた。
俺が持っていても存在自体を忘れる気がするし、ダンジョンで上手く活用してもらった方がいい。
数が多いので、多少はダンジョンを運営するポイントの足しになるだろう。
ちなみに譲渡せずに残したのは、いくつかの食料品や消耗品、娯楽品。
珍しそうな魔道具や、装備品などである。
譲渡した量に比べれば僅かではあるが、個人で持つ量としては多い。
侵入者たちの亡骸から直接奪った物もあるので、大量だ。
特に魔道具や装備品については、これから一つ一つ鑑定していく必要がある。
しばらく時間があるので、時間つぶしには持ってこいの作業だろう。
「にゃぁ」
「ああ、たぶん相手をしてやれないから、好きにしていいぞ」
「にゃにゃん」
俺が作業に没頭すると判断したらしく、レフはそう鳴いたあと部屋を出ていく。
ダークネスチェインを上手く操り、ドアノブを開けるのはレフにとっては簡単な事だ。
レフはしばらく過ごすことになる城の中を、探検するらしい。
ちなみに俺の配下も、俺と同様にダンジョン内で襲われることはないので大丈夫だ。
レフが基本召喚しっぱなしのことについても、既に話している。
まあ何かあれば、繋がりを通じて連絡を寄越すだろう。
さて、手に入れた物の中に、何か使える物があればいいのだが。
そうして俺は魔道具や装備品を一つ一つ取り出しては、鑑定をし始めるのであった。
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更新はしばらく隔日更新になります。
よろしくお願いいたします。
<m(__)m>
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