175 塔のダンジョン ⑦


 まず最初に動いたのは、ノーブルゾンビ。


 三体が同時に、毒の息を発動させた。


 しかしそれをすかさず、サンが緑斬リョクザンのウィンドソードからウィンドを発動して吹き飛ばす。


 その隙に、ジョンが一体に三点バーストを発動して仕留めた。


 だが味方がやられたことなどお構いなしに、ノーブルゾンビ二体が突っ込んでくる。


 それを迎え撃つのは、当然タンクのトーンだ。


 ノーブルゾンビのシャドーネイルを、大盾で塞ぎきる。


 よく見れば、大盾に硬化のスキルが施されていた。


 硬化は自身にしか効果がないはずだが……。


 不思議に思ったが、大盾の裏側をみてそれを理解した。


 なんと大盾の裏から根が全体に広がっており、トーンの体の一部と化している。


 なるほど。大盾を取り込んで、自身の体だと誤認させたのか。


 スキルが発動している以上、間違いない。


 同じ木材という事も関係しているのか? しかし大盾には、骨も使われている。


 多少の骨なら、問題ないという事かもしれない。


 そんなことを考えていると、戦闘が動く。


 背後に回ったサンが、ノーブルゾンビ一体の首をね飛ばした。


 すると残った一体を、トーンが口を開き噛みつく。


 そして何度か咀嚼そしゃくすると、そのまま体の中に押し込んで口を閉じた。


 問題なく貯蔵されたという事は、倒せたのだろう。


 最後にアロマが各種のアロマを発動させて、戦闘が終わった。


「お前ら、よくやった。見事な戦いだったぞ!」


 俺がそう声をかけると、ジョンたちも喜びの声を上げる。


 一度敗北したノーブルゾンビを倒せたことで、自信が付いたみたいだ。


 敗北からの勝利というのは、四体にとって得難い経験になったことだろう。


 そして、二体分の死骸をカード化しておく。


 一体はそのまま、トーンに与えることにした。


 苗床吸収や骸木人用として、上手く活用することだろう。


 ちなみにノーブルゾンビは、できれば合計10枚は確保しておきたい。


 現在3枚なので、あと7枚だ。


 それと終わってみれば、終始優勢だった気がする。


 これならCランク相手でも、十分に戦っていけるだろう。


 ジョン・サン・アロマはDランクだが、やはり装備というのはあなどれない。


 であれば、アロマにも何か装備を渡したいところだ。


 しかし現状残念ながら、アロマに渡せるような装備は余っていない。


 今後何か良いものが手に入れば、その時考えよう。


 そうして、この十一階層目を俺たちは進んでいく。


 現れるのは、スケルトンナイトとノーブルゾンビ。


 どちらもCランクだが、安定してジョンたちが倒していく。


 ノーブルゾンビも10枚になったので、残りはトーンに喰わせた。


 スケルトンナイトもここで切り良くそろえたかったので、少し粘る。


 そして無事にスケルトンナイトも100枚になったので、十二階層目に進むことにした。


 十二階層目には、引き続きノーブルゾンビが現れる。


 だが現れたもう一種類は、なんと初見モンスター。


 ここにきて、ようやく出会うことができた。


 その初見モンスターは、巨大な大トカゲのスケルトンという感じである。


 大きさは、グインの元の大きさの半分程度だ。


 気になるその能力は、次の通りである。



 種族:ボーンリザード

 種族特性

【闇属性適性】【闇属性耐性(小)】【生命探知】

あぎと強化(中)】【物理耐性(小)】

【威圧】【シャドーネイル】 



 おそらく、Cランクのモンスターだ。


 噛みつかれたら、進化したトーンでも危ないかもしれない。


 だが幸い、ジョンの魔導銃との相性がよく、難なく倒すことができた。


 魔導銃が撃つのは、魔力弾である。


 つまり魔法攻撃扱いであるため、物理耐性は関係ないのだ。


 ちなみに属性は、無属性のようである。


 そう考えると、魔導銃の強さを改めて理解した。


 現状魔法耐性よりも、物理耐性をもつ敵の方が多い気がする。


 また無属性耐性も、ほとんど見ない。


 だとすれば魔導銃はそういう面からしても、かなり優秀だ。


 これは強すぎて、戦闘の経験的にジョンの進化が遠のいたかもしれない。


 まあ、今更取り上げる気は無いので、このまま使わせることにしよう。


 それから案内役としてこの階層でカード化した、ノーブルゾンビを召喚する。


 ボーンリザードは、大きいので案内役に向かないのだ。


 しかし枚数は欲しいので、どんどんカード化していくことにする。


 幸いこの階層は、ボーンリザードの方が出現率が高い。


 切り良く20枚集めてから、次の十三階層目に進んだ。


 そして十三階層目でも、引き続き初見モンスターが現れる。


 ゾンビ系だが、鉄鎧のようなものを身に纏っていた。


 加えて、両手斧を所持している。


 見るからに、強そうだ。


 

 種族:アーマーゾンビ

 種族特性

【生命探知】【闇属性適性】【闇属性耐性(小)】

【身体能力上昇(中)】【毒耐性(小)】

【斧適性】【スラッシュ】



 ランクは、Cの上位といったところだろうか。


 動きは遅いが、両手斧の一撃は油断できない。


 特にトーンは木なので、両手斧は致命的だ。


 なるべく接近をさせずに、ジョンとサンの遠距離攻撃で仕留めさせる。


 だがそんな最中でも、もう一種類の敵が現れた。


 それはボーンリザードであり、こちらも一撃がキツイ相手だ。


 トーンは骸木人を生成して、相手をさせる。


 素材はノーブルゾンビだが、ボーンリザードのあぎとによる攻撃で、一撃で倒されてしまった。


 やはり、攻撃力が段違いだ。


 アーマーゾンビの増援も現れ、両手斧で骸木人を仕留めていく。


 これは、不味いな。


 倒す速度よりも、敵が集まってくる方が早い。


 特にジョンの魔導銃は撃つ際に、大きな音を鳴らす。


 それが、集まってくる原因だろう。


 最初は銃で無双していても、現れるゾンビの数に圧倒されるというのは、映画では良くある話かもしれない。


 そんなワンシーンが、何となく脳裏に浮かんできた。


 このままだと不味いな。仕方がない、レフとアンクも参戦させよう。


 ついでに、ホブンも召喚して戦わせた。


「にゃぁ!」

「ガガァ!」

「ゴッブア!」


 この三体が加わったことにより、戦況は一気にひっくり返る。


 流石に、アンクも変な事を口走る余裕は無いみたいだ。


 まあ、敵の攻撃が直撃すれば、アンクも一撃死をするかもしれない。


 これまではランク差で戦ってきたが、同ランクだと正面から戦うのはきつそうだ。


 そうして無事に戦闘も終わり、俺はモンスターをカード化していく。


 案内役は、今倒したアーマーゾンビだ。


 コイツも結構強かったので、枚数を揃えたいところである。


 同じランクだが、ノーブルゾンビより明らかに強い。


 ノーブルゾンビが指揮官なら、アーマーゾンビは戦士だろう。


 段々戦闘も厳しくなってきたし、レフ・アンク・ホブンも、引き続き戦わせる事にする。


 これ以上きつくなるようであれば、ここにグインも参戦させよう。


 ちなみにそんな現在の編成は、こんな感じだ。



 ・スケルトンたち(罠発動係)

 ・ジョン・サン・トーン・アロマ(第一パーティ)

 ・レフ・アンク・ホブン(第二パーティ)

 ・俺(監督役)

 ・案内役(階層ごとに入れ替え)


 

 案内役に俺が道を訊き、それをスケルトンたちに伝えて進ませる。


 敵が出れば一旦スケルトンたちを送還して、ジョンたちに戦わせる感じだ。


 更に戦闘が厳しそうであれば、そこにレフたちも参戦させる。


 俺は監督役であり、周囲に意識を向けながら、もしもの時は臨機応変に動く予定だ。


 もしかしたら戦闘後の隙に、突然襲ってくる者がいるかもしれない。


 戦闘は配下たちで十分なので、俺はこうして警戒に努めている訳である。


 未だに見つかっていない冒険者もいるし、油断はできない。

 

 もしかしたら先行している冒険者は、想像以上に強敵の可能性もある。


 最悪の場合には、ゲヘナデモクレスの召喚も考えよう。


 そうしてダンジョン内を進み、俺たちは十四階層目に辿り着いた。


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