危なかったですね

たけちー

(出目が悪かったら死んでましたよ)

 朝の駅のホーム。改札へ行くための長い階段。大勢の人々が、各々の目指す場所へ、縦横無尽に動き回っている。

 少年は焦っていた。急がなければバスが出てしまう。エスカレーターで移動してもよいのだが、いかんせん人混みが凄まじい。階段を使ったほうが早く移動できるかもしれない。

 少年は身のこなしには自信があった。筋力も敏捷性もそこそこ兼ね備えている。移動に何らの支障もないだろうと思われた。

 しかし、調子に乗って、階段にひしめいている人たちを、「敏捷性振って抜けます〜」と宣言してしまった。




「ファンブル!!??」

「えっ、ファンブル?」

「あ…………」




 そこそこ成功値がよい能力だったのも災いしただろうか。

 とにかく少年は、急ぎすぎたため、自らの足につまづき、体勢を崩すという事態に陥った。




「助けます」

「えっ…………」



 次の瞬間、筋力値で少年を上回る女性が、階段から転げ落ちそうになっている彼の手を掴んだ。




「…………クリティカル……………」

「嘘ぉ」

「出すの!? 出せちゃうの???!! なんか……すご……」




 斯くして女性は寸分過たず、少年の手を掴んだ。グイッと力を込めて彼を抱き寄せ、落下の危機から、彼を救った。



「あり得んけどすげーな……」

「まさか出るとは思わなかったけど、成功してよかった」

「うんうん。出目悪かったし、下手したら首の骨折れて亡くなってたかもね」

「シナリオ始まったばっかりなのに!?」

「そういうこともある。というか、普通に始めさせてくれ。変なとこで死にかけないように」

「まあ…………」



 女性は涼やかに笑いつつ、少年に声をかけた。

「……危なかったですね。無事でよかった」




「ロールプレイうまっ! これは惚れる」

「いいんですよ、惚れていただいて!」




 (最序盤)(話始まってない)(はよ進めろ)(とりあえずハッピーなのでヨシッ)

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

危なかったですね たけちー @takechiH

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ