タイムリミットはすぐそこに

色葉みと

タイムリミットはすぐそこに

「——っ! はぁ、はぁ」

「ね、姉さん! このままじゃ、やばいよ!」

「はっ、わ、わかって、るって」


 走る。二人はとにかく走る。あれを目指して。


 久しぶりに走っているから息切れがやばい。こんなことなら運動とかして体力つけておくべきだった。……まあ、今更後悔したって遅いけど。


「……姉さん。息切れ大丈夫?」

「だっ、だい、大丈夫。はっ、はぁ」

「そ、そっか」


 苦しそうに走っている姉、アリスに対して、弟、ルイスは姉を気遣う余裕を見せながら走っている。


 ……遠い! まだ着かないの!? すぐそこって書いてあるのに!


 かれこれ10分は走っていた。ひとつずつ重い荷物を引きずりながら。

 ルイスは突然ぴたりと足を止めた。


「はぁ、はっ、る、ルイス? どう、したの?」

「……姉さん。僕、大変な事実に気づいてしまったよ。これを見て」


 そう言ったルイスが指差したのは、とあるコンビニエンスストアだった。


「……ルイス。これ、さっきも見た、よね?」

「うん、さっきも、というかこれ見るの3回目だと思う」


 二人は10分間ぐるぐると同じところを回っていたのである。それもそのはず、目的地につかないわけだ。

 ルイスは頭を抱えた。


「……姉さんに地図を渡してしまった僕が馬鹿だった」

「私がちょっと、ちょーっと方向音痴だからってその言い方はないでしょ」

「ちょーっと方向音痴な人が同じところを3回も回る!?」

「……ゴ、ゴメンナサイ」


 アリスからさっと地図を奪うと、ルイスはそれを見て歩き出した。

 二人はしばらく何も話さずに歩く。


 ピンポンパンポーン


『〇〇航空より、最終のご案内を申し上げます。15時ちょうど発、〇〇航空△△行きは、ただいま□□搭乗口におきまして、最終のご案内中でございます。当便ご利用のお客様はお急ぎ□□搭乗口までお越しください』


「る、ルイス! 私たちが乗る飛行機ってこれじゃない!?」

「うん、急ぐよ姉さん。付いてきて」


〜数分後〜


 ピンポンパンポーン


『ただいまをもちまして、15時ちょうど発、〇〇航空△△行きのご案内を終了させていただきます——』


「ま、間に合った?」

「うん、本当にギリギリだね」


 二人はたった今、搭乗手続きを終わらせたところだった。


 次からは必ず時間の余裕を持って空港に着こう。


 そう誓った二人であった。

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タイムリミットはすぐそこに 色葉みと @mitohano

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