手を取る未来

一条深月

第1話

 王国は突如として魔王軍の襲来に見舞われ、彼らの魔法によって混沌と恐怖が広がった。

 王国の人々は逃げ惑い、町は炎上し、恐ろしい異変が次々と起こっていた。


 そんな中、勇者と呼ばれる若者が立ち上がり、魔王のもとへ向かった。

 彼は激しい戦いの末、魔王の城に到達するも、そこにはかつての残忍で強大な魔王の姿はなく、老いた老人のような男性が鎖で縛られていた。


「魔王......なのか」

「......そうだ」

「......なぜ、そんな」

「......反乱だ」


 勇者は愕然とした。魔王を倒せば、全てが終わると思っていたのだ。しかしこれでは、この戦いは終わらない。魔王を殺したところで、大義名分を与え、戦いをより激しくするだけだろう。


「私はもう、何もかも疲れ果てた。私はもう戦うことなどできはしない」


勇者は混乱する心を抑えながら、魔王に吠えた。


「そうしていれば、許されるとでも思っているのか! そんなことでお前が許されるわけがないだろう! お前が倒れなければ、こんな危機は訪れるはずなかった!」


 そう言って勇者は魔王の鎖を剣で断ち切った。そしてその剣を魔王に向かって差し出した。


「私はかつての戦いで多くの者を傷つけ、多くの命を奪った。だがその前には我らの国に王国が侵攻し、多くの命を奪っていった。どちらが悪いとも言う気はない。我らはこの繰り返しを1000年前からしているに過ぎないからだ。しかし人類と魔族が互いに憎しみあっている状況では仮初の平和すら作ることは不可能だ」


 そう言って、魔王は差し出された勇者の剣に手を伸ばし、それを破壊した。


「安心せよ、協力は惜しまん。だが剣で対抗する限りこの戦いは終わらん。私はもう戦いたくない。もう一度平和な時代を取り戻すためにお前達人類を理解させてくれ」


 勇者は言葉に詰まった。だが悲しみと諦めしか映っていなかった魔王の目に、真剣さが映ったことを確かに見た。

 そして危機一髪の状況下で、彼らは共に新たな道を切り開く決断をした。

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手を取る未来 一条深月 @Shingetsusan

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