強面家政夫さんとゆるふわドジっ子さん

掛川ゆうき

第1話 ど、泥棒!?

 ピンポーン


その直ぐ後だっただろうか。 家の中から物凄い音がしてきた。


 ガシャーン、ドンっ! バリンっ!!


その物凄い音を玄関で、しかもチャイムを鳴らした直後に聞いたのは、本日からこの家で家政夫として働く事になっていた武蔵野 豪(むさしの ごう)だ。


家の中から聞こえて来た音。 いや一瞬耳を塞ぎたくなるような大きな物音に何か起きたのか? と思った豪は慌てたように玄関のドアを開けると、悪いと思いながらも入って行ってしまう。


今日初めて訪問したのだから、当然、間取りなんかは分かりやしない。 そう豪はキョロキョロと辺りを見渡し、さっき声がした方へと急ぐのだが、その直後にも物凄い音が再び耳に入って来たようだ。 急いで、そうその音のした方へと向かう。


豪は音のした部屋とココの家主であろう人物を見つけて、


「だ、大丈夫ですか?」


と声を掛けた直後、今度は部屋内に物凄い声が響き渡るのだった。


「ギャッー! あ、貴方、誰ですか!? 朝から勝手に人の家に入って来て! け、け、警察呼びますよ!」


そうココの家主はスマホを手に取ると、今にも本当に今にも警察へと電話してしまいそうな勢いだ。


そんな家主に豪の方も慌てたように、


「ちょ、ちょ、ちょっと待って下さい! 立川(たてかわ)さん! お忘れになったんですか? 今日から家政夫として、こちらの家で働かせてもらう事になってる、武蔵野 豪ですよ」


そう豪が簡単に挨拶をすると、暫く間が空いた後、立川は思い出したのかスマホのボタンを押す指を止め、


「あ、あー! そうでしたかぁ。 も、申し訳ございません。 てっきり、強盗かと思っちゃいまして……」


その言葉に豪の方は項垂れてしまうのだ。 だって、そうだろう。 豪の方は心配して部屋の中へと入って来たのに、家主である立川は、豪を見るなり警察を呼ぼうとしていたのだから。


 そこは豪という人物は、元から強面な顔をしているのだから、強盗だとか誘拐犯だとかという人物に間違わられても仕方が無いという所なのかもしれない。 


 とりあえず、一瞬、豪はため息は吐いたものの気を取り直すと、今度、立川の方は優しそうな笑みを浮かべ豪の方へと視線を向け、


「私の方は立川 慧(けい)です。 これから宜しくお願いいたしますね。 それと息子の琥太郎(こたろう)になります」


 と丁寧に挨拶をしてきて、やっとお互いに挨拶し会えたという形になったようだ。


そう豪は確かに任侠ドラマに出て来そうな怖そうな顔をしているのだから分かっていたのだけど、こうハッキリと犯人顔だとか強盗だとかと、こうなんというのかここまでハッキリと言われた事はなかったようは気がする。


 いやしかし普通ならば先ず段階として、チャイムを鳴らして訪問者を確認して玄関で軽く挨拶をして、家政夫さんだっていうのを確認してからお部屋にどうぞ。 となる筈なのに、今回の場合には豪がチャイムを鳴らした途端に中から物凄い音がして、豪は心配し、お互い紹介しないままで部屋の中に入ってしまい、おまけに訪問者が強面顔だったのだから仕方がない所なのかもしれない。


落ち着いた所で豪が辺りを見渡してみると、足の踏み場がない位に部屋の中がごちゃごちゃだった。


 そんな豪に気付いたのか慧は、


「スイマセーン……ごちゃごちゃとしてて……」


 慧は本当に申し訳無さそうに豪に向かい、こうゆるふわな笑顔で頭を下げていた。


まぁ、とりあえず子供もいて仕事で忙しいのなら、これが普通だろう。 だから豪の方は気にしてなかったのだが、慧の息子である琥太郎の言葉で驚くのは間違いないのかもしれない。


「でもね、これ、全部パパがやったんだよ!」


そう可愛く説明してくれたのは、立川の息子の琥太郎だ。 そうさっき慧が豪に簡単に挨拶はしてくれたのだが、年齢の方はまだ聞いてはいなかった。 見た目からすると、五歳または六歳位であろうか。 まだまだ幼くやっと赤ちゃんからちょっとだけお兄さんっていう感じで言葉も大分分かるようになった歳位なのだから。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る