【実話】憧れだったAV女優とシた話。

あおたか

前編

「ギブアップか?」

「…しないっ…!」


苦悶の表情を浮かべながら、男優の攻めをひたすらに耐え続ける女優。


攻めていた時の強気な態度とは打って変わり、快楽の前に気持ち良さそうな声を漏らし、徐々にフィニッシュへと追い詰められていく。


もちろん、あくまでそれが台本に沿った演技であることは、十分理解している。


ただ、敗北に抗おうとする彼女の姿からは、何故かそうした要素をまるで感じられなかった。


今この作品を観ているのは、好きなプロレスをテーマにした作品だからで、別に、彼女が出演していたからという理由ではない。


それどころか、彼女のことは、この作品で初めて知ったくらいだった。


調べてみると、出演作品こそ多く、界隈ではそれなりに有名だとは思われるものの、誰しもが知っているという程ではないだろう。


「ギブアップしろっ!」

「ごめんなさい、ギブアップ…!」


その後も頑なにギブアップを拒絶していた彼女だったが、程なくして男優の攻めに屈する形で、ついに自らギブアップを宣言する。


そして、まるで本当に果ててしまったかのように、ぐったりとダウンした。


「『私の負けです』って言えっ!」

「…私の…負け…です…」


そうして試合が終わり、敗者となった彼女は、勝者である男優のモノにされてしまう。


この時はただ、一人の視聴者として、その様子を眺めていることしかできなかった。




「AV女優とシたい」


それから何年か経った年の末、来年やりたいことを考えていた時、ふと、そうした願望が頭に浮かんだ。


現役のAV女優となると、事務所に所属していることもあって難しいだろうが、「元」AV女優だと、実は可能性がゼロという訳でもない。


以前、気になったAV女優について調べていたところ、引退して風俗店で働いていた、ということがあったからだ。


風俗なら、いつも画面越しでしか見れない憧れのAV女優とも、お金さえ払えば、身体を交えることができる。


他にも、例えば撮影の裏側のような、一般人が決して知り得ない話を聞くこともできるかもしれない。


早速、「知っているAV女優の名前+風俗」と、手当たり次第に検索していたところで、不意にあの女優のことを思い出した。


割と最近まで、プロレスをテーマにした他の作品にも出ていた気もしていたが、もしかしたらと思い、情報を集めてみる。


それらを元に、とある高級デリヘルのホームページを見てみると、名前こそ違っていたものの、在籍していたのは確かに彼女だった。




どうやら、昨年まではAV女優として活動していたものの、現在は引退しているらしい。


高級デリヘルということから、嬢のレベルは上々だったが、「元有名AV女優」の肩書きもあってか、その中でも一際存在感を放っている。


出勤頻度は低く、料金はオプションも含めて特別料金と、今や風俗嬢とは言え、それでも簡単には手が届かないように感じた。


特にハードルが高かったのは料金面で、設定されている料金に加え、店までの移動費や、当日利用するホテル代までかかってしまう。


さらに、出勤している時間帯が主に夜だったことから、現地での宿泊の費用も必要となる。


また、日時についても、スケジュールが不透明ということから、非常に調整が難しい。


これなら、地元の風俗街の高級ソープにでも行った方がまだ良いと、一度はそこで考えるのを止めてしまった。




それから半年ほど経ったある日、ついに、絶好のチャンスが訪れる。


トラブルにより、その週の金曜日だけ、仕事の量が極端に少なくなることが分かった。


何とか休めそうだと考えたところで、それまでほとんど意識していなかった、「AV女優とシたい」という願望が、突如として蘇る。


このタイミングなら調整がつきやすく、あの女優と会えるかもしれないと、すぐさまお店のホームページを確認した。


結果、夜の一枠だけ空いていることが分かり、それから思考すること、ほんのコンマ数秒。


次の瞬間には外に出てお店に電話、その間もずっと、どのような理由で休むかまで、完全に会いに行く前提で頭をフル回転させていた。


移動手段も宿泊先も確保していなかった上に、依然としてハードルの高い、料金の問題もクリアになっていないまま、予約は無事に完了。


こうして、何とその日から2日後に、彼女と会うことが決まってしまった。




ところで、某情報系サイトには、利用者と嬢がチャットでやり取りすることができるという、中々に貴重なサービスが存在する。


もちろん、嬢が返信してくれるかは確実ではなく、あの女優のようにステータスが高い嬢であれば、何の反応も無いかもしれない。


ただ、別に送るだけならと、予約の確認も兼ねて、メッセージを送ってみた。


「⚪︎日の⚪︎時から予約させていただいた⚪︎⚪︎です。AV女優だった頃のファンです。当時会えるのを楽しみにしています。」


ただ、この時はメッセージを送ってから、とても後悔したのをよく覚えている。


まず、ファンと言っても、実際に観たのは、冒頭でも触れたプロレスをテーマにした作品と、デビュー時の作品の2つだけ。


ファンというにはあまりにも歴が浅く、本人からコアな質問でもされれば、うまく答えられずに、すぐボロが出てしまうだろう。


また、今は風俗嬢として働いているのに、AV女優だった頃のファンだと言って会いにいくのも、気持ち悪いと思われるかもしれない。


もしかしたら、予約自体キャンセルされるのではないかと、色々な不安に駆られてしまった。


(後編に続く)

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