あなた自身は、自分をテングだと思いますか? カッパだと思いますか?

 難しいね。正直わからないよ。


 自分自身の帰属意識の問題だろうけど、俺は自分がどちらへ帰属しているのか、決められないんだよね。


 さっきの手紙もそうだけど、テングたちは俺のテング部分よりも、カッパ部分を強く意識するのよ。テングたちにとって俺は『わたしたちと同じテング』じゃないんだよね。


 逆にカッパたちは、俺のカッパ部分ではなくて、テング部分を強く意識すると思うよ。カッパたちにとって俺は『わたしたちと同じカッパ』じゃないんだよね。


 この点は、実は俺の中でも同じことがいえるのよ。テング界にいたときは、俺は自分のテング部分ではなくて、カッパ部分を強く意識していたし、逆にもしカッパ界にいるとしたら、俺は自分のカッパ部分ではなくて、テング部分を強く意識するだろうね。


 コミュニティには必ず対内道徳があって、対内道徳は排他的なものじゃない。対内道徳が異物を排除しようとするから、こういう意識が働くんじゃないかな。


 俺はテング界にいればカッパだし、カッパ界にいればテングなのよ。


 ベン図を思い浮かべてほしいんだけど、俺は、集合Aの円と、集合Bの円が重なっている部分、真ん中のレモン型の共通部分の存在だと思うのよ。左右の円の、レモン型の共通部分以外の部分、つまり対称差の部分ではなくて、あくまでもレモン型の共通部分に、俺はいるんだよね。

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