すべてのテングとカッパが、互いに差別意識を持っていると?
俺はそう思うね。というのも、あるときこんな手紙をもらったのよー
わたしは自分が偽善者であることを認めます。その上で、名前を明かさないことをお許しください。
わたしは君に対して行われている恥ずべき行為の数々を見て見ぬふりをしている者の一人です。このところ、それが目に余るほどエスカレートしていると感じて、一つだけ君にどうしても伝えておきたいことがあり、筆をとりました。
率直にいうと、君だって、わたしたちと同じテングなのだから、君に対するいじめは間違っているとわたしは思います。慰めになるかわかりませんが、そう考えている者は、わたしのほかにも大勢います。君をいじめている人たち以外は、きっとわたしと同じ気持ちだと思います。
だから、全員が敵だと思わないでください。全員が敵ではありません。これは本当です。
この手紙はわたしの自己満足に過ぎません。かえって君を傷つけてしまうことになったら、お詫びします。そのときは、この手紙はそれこそただの紙切れなのですから、どうかそのままくずかごへ捨ててください。
ー要するにこの人は俺を擁護しようとしてくれているのよ。本人がいっているように、偽善に過ぎないけどね。
でも情けない話、慰めになったよ。さっきもいったけど、俺はこういう人たちを非難しようとは思わないんだよね。逆の立場だったら、自分も偽善者になるだろうから。
ただ問題は、そこではないんだよね。問題は「君だって、わたしたちと同じテングなのだから」の部分なのよ。
これはカッパのことを認めていないから、出てくる言葉なんだよね。結局、この人はカッパを見下しているのよ。カッパに対して差別意識を持っていることに、気がついてすらいないのよ。本気の善意だから、かえってたちが悪いよね。
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