魔法のカードとの出会い

そもそも、私は元々将来のことを考える堅実タイプではない。

今が楽しければそれでいいマインドが非常に高く、嫌なことは後回し。夏休みの宿題は最終日になって慌ててやり出す典型的なタイプ。

座右の銘は「後は野となれ山となれ」。

後先考えない。危険。こういうタイプは危険。



そんな私が魔法のカードと出会ったのは20年ほど前、貧乏学生だった20歳くらいの頃。

高校卒業後に1年バイトをして貯めたお金を上京資金に充てた為、貯金はスッカラカン。きれいさっぱりゼロ。毎月カツカツでの生活。

食費を浮かせる為に毎週近所のスーパーの試食を必ず2周していた。いい迷惑だな。

空腹すぎて肉の幻覚を見たこともある。

目の前の肉に手を伸ばした途端、肉は目の前から消え、それが幻なんだと気付いた。口元からはヨダレが出ていた。失望した。

マッチ売りの少女もきっとこんな気持ちだったんだろうな⋯


それは一旦置いといて。

ある日学校の友人(ギャル)と渋谷に行った時に私は信じられない光景を目の当たりにした。

友人がカードで買い物をしていたのだ。これには衝撃を受けた。

田舎育ちの私は親から「クレジットカードだけは決して作ったり使ってはいけない」ときつく言い聞かされていたのでそれを守っていたのだ。

それが、あろう事か使ってはいけないとされている禁断のアイテムを友人が使用しているではないか!目の前で!

友人は私よりも1つ年下のギャルで、実家住みでバイトしているとはいえ所詮学生。そんなにお金を持っている訳でもない。

そんな彼女が羽振りよく次から次へと買い物をしていく⋯

「え、そんなに買って大丈夫?」

動揺する私の問いに彼女はあっけらかんと答えた。

「だって今お金無くても来月払えばいいんだよ?すごくない?」

⋯⋯たしかに。

え、待って。それってマジですごくない?ヤバ、魔法のカードじゃん!!すげぇっ!!!!

こうして禁断の扉は開かれたのです。





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