黒ひげ危機一髪をクリアしないと出られない部屋に閉じ込められた俺と幼馴染の顛末

藤屋順一

危機一髪

放課後に入ってすぐの体育館へと向かう渡り廊下、左側に見える校庭は普段なら運動部の活動で賑わってるんだけど、今日はテスト前の全体休部とあって随分と静かだ。そして右側には体育の授業で使う物品をしまう体育倉庫が建っている。

大きな器具を出し入れするシャッターの脇には人間が出入りするためのドア。試しにノブをひねってみると、カギは開いているみたいだった。

先客かな?

さらにノブをひねって、そっとドアを開けると、不意にギギギ…… と古い金属のきしむ音が鳴って、悪いことをしているわけでもないのにドキリと心臓が高鳴った。


「ユウカ? 一通り探してみたけど、キーホルダー、見つかんないよ~」


一瞬驚いたけど、鈴の鳴るような澄んだ声で、あまりにも気の抜けた調子で話すもんだからすぐに緊張の糸が、切れるどころかどこかへ消え去って行った。

それは聞き馴れた女子の声、そして名前を呼ばれたクラスメイトの顔がパッと思い浮かんだ。

この声の主は幼馴染の詩結に違いない。


ということは、シユも友人の失くし物を探しに来たのか?


「ここで何してんの? シユ」

「わわっ! びっくりした~」


親友が来たと思って油断していたシユは背後からの俺の声に驚き、猫のようにぴょんと小さく飛び跳ねて、びっくりしたことをびっくりしたとそのまま主張する。

そこに緊張感などが皆無なのは、天然なのか瞬時に俺だと気づいたからなのかはよくわからない。

肩にかからないくらいの長さのサラサラの黒髪、特徴もクセもない平凡な顔立ち、身長は高くも低くもない155センチ、醸し出す雰囲気は人畜無害の小動物っぽくて男子女子問わず人気がある。

それが目の前で二重のまぶたをぱちくりさせている幼馴染み、片桐詩結だ。


「なんだ、ヒロくんか~ 驚かさないでよ」

「シユが勝手に驚いただけだろ」

「もぅ、ヒロくんが驚かすから悪いんだよ」


シユは俺の言葉に不満気に抗議するが、残念ながら何の迫力もない。


「で、何してたの?」

「ん~、ユウカがテストのお守りのキーホルダーを失くしたから放課後一緒に探して欲しいって言われて来たんだけど…… ヒロ君は?」

「俺も全く一緒。帰ろうとしたらハルトに連れションに誘われて、そん時体育倉庫で失くし物したから一緒に探すよう言われて……」

「え、それって……」


――ギギギ…… カチャッ


「あれ?」

「ん?」


さっき聞いたドアのきしむ音に続いてカギがかかる音。シユの視線が俺の背後に向かい、咄嗟に振り向くと、閉めた覚えのないドアが閉まっていた。


「まさか……」


嫌な予感がして慌ててドアノブに飛びついてひねってみたけど、時すでに遅し、案の定外からカギがかかっていた。


「おい、ハルト、ユウカ! お前らだろ! 開けろよ!」

「もぅ、二人とも開けてよ~!」


ハルトとユウカは俺とシユの共通の友達で、最近付き合い始めて毎日二人で楽しそうに青春を謳歌しつつ俺たちを巻き込もうとしてくる。

今回もそんな二人の悪ふざけに違いない。


ガチャガチャとノブを捻り、ドアを叩きながら二人に呼びかけても何の返事もない。


「あ、ヒロくん、ドアの下から何か出てきたよ」


と、シユの声に視線を床に向けると、ルーズリーフの一枚がドアの隙間から半分覗いていた。


「やっぱりそこにいるんじゃねーか!」


腹が立って怒鳴ってみても、案の定というか、何の返事も返ってこなかった。


「ねぇねぇ、なにか書いてあるの?」


このままじゃラチがあかない。

シユの言葉に促されてルーズリーフを引っ張り出してそこに書いてある文字を読み上げる。


「『右奥にある箱の中を見よ』だってさ」

「右奥…… あっ、あれかな?」


見渡したシユが指差す方を見ると、教室机の上に中くらいの大きさの真新しいダンボール箱が置かれ、ネット通販大手JUNGLEのロゴが存在感を放っている。

確かに、きっとあれだろう。


A4を横向きにしたど真ん中に無機質な筆跡で小さく1行書かれたその紙は、漫画やアニメに出てくるソレで余計に腹が立ってきた。


「何が入ってるんだろうね?」

「知らねー」


シユの言葉には俺に開けさせようという強い意志が込められている。

友人たちの悪ふざけに乗るのは癪だけど、シユの言う通り箱の中身は気になるし、どうせ従わないと出してもらえないだろうし……


「はぁ…… しゃーないか」


ため息も自然に漏れてくるわ。


「頑張れー」


なんの感情もこもってない人任せな応援を受けて、俺のやる気はミニマムだ。


ダンボールの前に立ってガムテープを剥がすと、いつの間にかシユは俺の隣のちょっと下がった位置でその様子を眺めていた。


「開けるぞ」

「うん…… なんだかドキドキするね」


そしておもむろにフタを開くと……


「これって…… わぁ、懐かしい!」


古びてボロボロの箱に樽から海賊が飛び出すイラスト、そしてカラフルな『黒ひげ危機一髪』の文字。どう見ても昔遊んだお馴染みの玩具だ。

シユは早速その箱を取り出し、目を細めてしげしげと眺めている。


「でも、なんで黒ひげ危機一髪なのかな?」

「ん? なんか紙が入ってるぞ」


『黒ひげ危機一髪をクリアするまで出られない部屋』


この部屋は黒ひげ危機一髪をクリアしないと出られない部屋です。

二人にはこれから黒ひげ危機一髪をしてもらいます。

クリア条件は黒ひげを最後の一刺しで飛ばすこと。もしも途中で飛ばしてしまった場合はまた最初からやり直しです。

見事クリアできれば二人は無事この部屋から解放されますが、クリアできなかった場合は……

それでは、二人の幸運を祈ります。


「くっそ! あいつら、ふざけやがって!」

「ん? なになに? ……黒ひげ危機一髪をクリアしないと出られない部屋……? ふーん、途中で飛ばしちゃダメなんだね。ということは、どこかで見てるのかな?」

「……あった、あれだな」

「ほんとだ、カメラだね。二人とも見てる~?」


田舎の親戚のビデオレターかな?

倉庫の真ん中を映すように設置されたWi-Fiカメラに向かってシユはゆるい笑顔で手を振っている。


「おい! ふざけてないで開けろよ!」

「まぁまぁ、カメラに向かって怒ってもしょうがないよ。さっきも開けてくれなかったし。書いてあるように黒ひげやった方が早いんじゃないかな?」


そう言いながらシユは箱からプラスチックで出来たタルを取り出し、黒ひげ人形をタルに差し込んでキコキコ回している。

ビデオレターしてた奴に言われたくはないと思いつつ、まぁ確かにその通りかもしれない。

これが滅茶苦茶低い確率だったら話にならないけど。


「それで、最後まで飛ばさずにいる確率ってどのくらいだ?」

「ん-と、穴の数が24個だから、最初にハズレを引く確率が24分の23で、次に引く確率が23分の22になって、それが2分の1まで続いて…… 分母と分子の同じ数を消せるから…… うん、24分の1だね! ……多分」


シユが首を左右に傾け、ぶつぶつ言いながら導き出した数字は意外と現実的だ。


「ほんとかなぁ?」

「昨日テスト勉強で確率のとこやったからね。きっと合ってるよ」

「ま、信じるしかないな。さっさとやってさっさと終わらせよう」

「そだね」


段ボール箱をどかした教室机の上にタルを置くと、そこにシユが4色のプラスチックの剣を並べていく。


「ヒロくんはどの色が良い?」

「なんでも良いよ。どうせ何回もやることになるんだろうし」

「じゃあヒロくんは青と緑ね。私は赤と黄色」


なんとも単純な色分けはシユらしいというかなんというか……


「それじゃあヒロくんからどうぞ」

「おう」


どうせ最初にアタリを引く確率はかなり低いんだ。

タルの前に並べられた青い剣をつまんで、迷うことなく一番手近な穴にプスっと刺す。


ピョン


「……」

「あはは…… 幸先悪いねぇ」


ケラケラと笑うシユを無視して下を見ると、無情にも床に転がる黒ひげが無表情に俺を見つめている。


「はい、次はシユからな」


タルに一本だけ刺さった剣を引き抜いて黒ひげをてっぺんに挿し込んでキコキコ回し、ずいとシユに押し付ける。


「え~、どこにしようかな…… ここにしよ。えいっ!」


シユはタルの周囲をぐるりと見回し、一か所の穴に狙いを定めて赤い剣をプスっと刺す。


ピョン


「あう……」

「ぶはっ、ははは……」

「これ、細工とかしてないよね?」


その間の抜けた表情に思わず吹き出してしまって、シユは不服そうにタルの穴をのぞき込んでいる。


「うん、わかんない! 次行こ、次」

「おうよ」


それから……


プス、プス、プス、プス、プス、ピョン。

プス、プス、プス、ピョン。

プス、プス、プス、プス、プス、プス、プス、プス、ピョン。

プス、プス、プス、プス、プス、プス、プス、プス、プス、プス、プス、プス、プス、ピョン。

プス、プス、ピョン。

……

……


そうして数え切れない失敗を繰り返し、とうとう残り3本のところまで辿り着いた。


「もうすぐだよ。慎重にね。ヒロくん」

「言われなくても分かってるよ」


慎重に、とは言っても完全に運だからどうしようもない。

疲れと苛立ちで、ついつい言葉が荒くなってしまう。


「ん、そだよね。ごめん……」

「ああ、いや、そういうつもりじゃなくて……」

「うん、大丈夫。ちょっと疲れてきちゃったもんね」


そんなシユの笑顔にも疲れの色が隠せないでいる。

二人ともそろそろ限界だ。


「よし、ここだ!」


3つの穴から黒ひげの正面下の穴を選び、その無表情を睨みつけながら緑の剣を刺す。


プス、ピョン。


「あー、くっそ! もう無理!」

「うーん…… どんまい、ヒロくん」


床に転がる黒ひげを拾い上げて乱暴にタルに挿し、その頭を回そうとすると……


「大丈夫? ちょっと休憩しよ。私もちょっと疲れてきちゃった」


タルを掴んだ手に小さく柔らかな手が添えられる。

その感触で、温かさで、苛立ちがすっと治まっていく。それはまるで子どもの頃にしてもらった『痛いの痛いの飛んでけ』のおまじないみたいに……


「ははは…… そうだな。ん~、ふぁ~あ……」

「あはは…… じゃあ私も。んんっ、ふにゃ~」


笑って伸びをすると、自然とあくびが出る。シユも俺のあくびを見てゆるく笑い、同じように伸びをして変なあくびを出した。

それからゴソゴソと鞄の中を探って何かを取り出す。


「お菓子食べる?」


差し出されたポケットサイズのパッケージに入ったミニクッキーは既に袋が開けられて半分ほど減っていた。


「お~、サンキュな」


しっとりサクサクのクッキーはシユのお気に入りで、昔はよく貰ったり勝手に食べたりしていた懐かしい味だ。


「懐かしいな、このクッキー」

「うん、よくヒロくんに取られたり勝手に食べられたりしてたよね」


そう言いながら、俺の持っているパッケージから一枚つまんでリスのようにサクサクと良い音を立てて咀嚼する。こんな光景もまた懐かしかった。


「さて、それじゃあまた苦行に戻りますか」

「うぅ、やだなぁ…… 終わったらユウカに文句言わなきゃだね」

「俺も、ハルトにメシでもおごらせなきゃ気が済まねー それじゃ、今度はシユからだぞ」

「はーい」


返事をしながらタルを手に取って黒ひげの頭を回して、はっと何か思いついたように顔を上げる。


「あっ、そうだ。失敗したときお互いに気まずくならないように、失敗したら相手の良い所をひとつ言うってどうかな? もしヒロくんが失敗して私が『あーあ……』ってなっても、私を褒めてくれたらチャラになるよ」

「なんだそれ? それじゃあシユが失敗しても俺の良い所を言うんだな?」

「うん、任せて!」


と、めったに見せない頼もしい表情で赤い剣をタルに刺す。


プス、ピョン。


「あう……」

「ははは……」


見事にフラグを回収し、シユは首を傾げてタルから剣を引き抜く。


「えっと、ヒロくんの良い所は…… 意外と頼りになる所です」

「意外と、ってなんだよ」

「えへへ、良いじゃない。褒めてるんだから」


まぁ、余計な一言はついているが悪い気はしない。

視線を外して照れ笑いを浮かべているところを見るとなおさらだ。


「はい、次はヒロくんからだよ」

「はいはい」


そして最初の一刺しのフラグは回避してシユに渡し、それから何度かラリーが続く。


プス、プス、プス、プス、プス、ピョン。


「なっ……!?」

「あらら、残念だったね~」


不意に黒ひげが飛んで固まる俺に、シユはにんまりと表情を崩す。


「なんで嬉しそうなんだよ?」

「え? そんなことないよ。それより、ほら、ほら」

「ああ、シユの良い所ね…… えーと……」


その時になって改めて考えると、なにを言えばいいんだろう?

正直に言ってシユの良い所はたくさんある。

優しいし気が利くし人の悪口は言わないし真面目だし歌は上手いし料理は得意だし…… それに何より、可愛いし……

どれか一つを選ぼうとした途端、気恥ずかしくなってしまって何を言っていいのかが分からなくなる。


「何かな何かな?」

「あー、シユの良い所は、誰にでも優しい所です……」


シユからの圧に負けて無難そうなのを言った瞬間に、カッと体温が上がる。


「ふふ、ありがと」


にっこりと微笑むシユを見て、思わず目をそらしてしまった。これじゃ照れてるのがバレバレだ。そういえばこんな風にシユを褒めたのは初めてかもしれない。


「はい、次行くぞ、次!」

「はーい」


プス、プス、プス、プス、プス、プス、プス、プス、ピョン。

「えーと、真面目な所!」

「えへへ」


プス、プス、プス、プス、プス、プス、プス、プス、プス、プス、プス、ピョン。

「あぁっ!? 歌が上手い所!」

「ふふっ、やったぁ」


プス、プス、プス、プス、ピョン。

「あれ? んー、猫が好きな所」

「なんだよそれ?」

「猫が好きなのは良いことだよ」


……

……


そうしてまた失敗が続き、俺のメンタルがズタボロなのに対して目の前のシユはご機嫌でニッコニコだ。

そして俺の番。


プス、ピョン。


「はぁっ!? 俺の時だけおかしくないか?」

「えー、気のせいだよ。私だってヒロくんのこといっぱい褒めてるよ」

「あー、うーん、えーと……」


思いつくのはもう出尽くした。残りの一つ以外は。

ちらっとシユを見ると期待の眼差しで俺を見詰めて無言の圧を掛けてきている。

もう、どうなってもいいや。


「その…… 可愛い、ところ…… です……」


ああ、やっぱり言うんじゃなかった。照れて自分でも顔が真っ赤になってるのが分かる。

でも、それ以上に……


「んん~っ!」


その声に顔を上げると、シユは背筋をピンと伸ばし両手で顔を覆っていて、その指の隙間からは真っ赤になった頬が覗いている。

シユの方もよっぽど恥ずかしかったんだろう。


「ちょ、ちょっと休憩しようか!」

「う、うん、そだね!」


お互い逆方向の壁に向かって暫く、ようやく気持ちが落ち着いてきた。

「やっぱり、普通に黒ひげ危機一髪して早く終わらせよう」

「はぁ~ うん、その方が良いね。ふふ、もういっぱい褒めてもらったし」


それから数度の失敗の後、俺の番になってようやく残り二つ、最後の二択に到達した。

上段の二つの剣を挟んだ右か左か…… もう悩んでも仕方ない。

右の穴に緑の剣の先を軽く入れて、一気に突き刺す!


……


根元まで突き刺した感触の後手元を見ると、黒ひげは無表情のままタルの中に納まっている。


「やった! やったね。ヒロくん!」

「しゃぁあっ! どうだ見たか! ハルト、ユウカ!」


ずっと俺たちの様子を監視していたカメラに23本の剣が刺さった黒ひげ危機一髪を突きつけてやる。


「クリアの条件は最後の一刺しで黒ひげを飛ばすこと、だったよね」

「よし、それじゃあシユ、任せたぞ!」

「……ねぇ、折角だから、二人で一緒に刺さない?」

「は?」


と、差し出されたシユの手元を見ると剣の鍔の部分を指先でちょこんと摘まんでいた。

なるほど。


「うん、そうだな」


俺も空いた方の鍔を、二人の指先が少し触れるのを気にしない振りして摘まんだ。

そしてタルに残った最後の穴へ……

二人で一つの剣を持って、ってまるでアレみたいだ。何とは言わないけど。


ピョン。


かくして黒ひげは無事にタルから飛び出し、その瞬間にカチャリとドアの鍵が開く音がした。

そして勢いよくドアが開かれ……


パーン! パーン!


「「脱出おめでとう~!」」


クラッカーの音と色とりどりのテープとともにこの件の主犯二人が登場する。


「おめでとうじゃねーよ!」

「もうっ! ユウカもハルくんもっ!」

「あはは、まぁいいじゃん。無事に脱出できたんだし。それに、楽しかっただろ?」

「ふっふーん、ずっと前から計画してたんだー」


目の前の能天気バカップルがケラケラと笑い合うのを見て、それとは正反対に俺とシユもお互いを見合って深くため息を吐く。

この二人を見ていると怒る気力も失せてくる。それはシユも同じみたいだ。


「それじゃあ、はいコレ。お詫びも兼ねたこのゲームの賞品な」

「アタシんちのお古だけどね~」


とか言いながら黒ひげ危機一髪を箱に直して俺の目の前に突き出してくる。


「いらんわ! もう見たくもねーよ!」

「ははは、まぁそう言うなって」

「えーと、じゃあ、私がもらっても良いかな?」

「うん、もちろん! それじゃ、はい、シィちゃん」

「ふふ、ありがと」


シユもまぁ物好きなもんだ。


「なぁ、ヒロツグ、シユちゃん。テストが終わったらあそこのテーマパーク行こうぜ!」

「ダブルデートってやつ。二人とも、それまでにちゃんと準備しときなさいよ~ とくにヒロ。分かってるわね!?」

「はぁ? 準備って、テーマパーク行くだけだろ」

「はぁ…… シィちゃんも苦労するわねぇ」

「え? えっと、あはは……」


そしてまた俺たちを放っておいてバカップルがワイワイとはしゃぎ合いはじめた隙に……


「ねぇねぇ、ヒロくん。また二人でしようね」


さっき貰った黒ひげ危機一髪の箱を見せながらそう耳打ちしてくる。


「う、うん…… そうだな」


俺も、物好きなのかもしれない。

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