第10話 俺は姉から、デートしようと迫られる。
「はい?」
「今からわたしとデートしよう!」
いや、訊き返した理由は聞こえなかったからじゃないんだが。
姉が俺とデートを今からする、なんて言い出した。
姉弟が出かけるのは、デートとは言わないのだが。
そう思った俺は、姉にの言葉に反論する。
「静、姉弟で出かけるのはデートじゃない。
デートというのは、家族という関係ではない男女が外出して、その間同じ時間を共有することを言うんだ」
俺が反論し終えた瞬間、姉が俺の反論に対して反論する。
「でもわたしたち、元々家族じゃなかったわけでしょ?
姉弟だけどそれは法律上の関係で、生物学的には血が完全につながってないんだから、わたしたちが二人で出かけるのも、デートと言って間違いじゃないよ」
それは屁理屈、というのではないかい。
姉の言葉に、どうにも納得できず。俺は反論する。
「でも、今は私と静は法的にれっきとした家族なのは事実だ。
だから家族と国に認められてる以上、私と静が外出するのはデートじゃない」
俺のその言葉に姉は頬を膨らませてむすっとする。
「もう!わたしがデートといったらデートなの!とにかく、今からデート行くよ!」
姉が俺の反論を聞いて、屁理屈をこね始める。
何が何でも、デートという名目で俺と出かけたいらしい。
俺は昨日のことがあったので、あっさり折れることにする。
「わかった、わかったから一緒に出かけよう。でも、一緒に出かけるなら事前に言ってくれ。いつ出かける日を決めたんだ」
「ついさっき。だって昨日は健くんとイチャイチャするのに夢中になってて、デートするところまで頭が回ってなかったから」
姉は隠すことなく、今日今この時に、俺と出かけることを決めたという。
姉の突飛な行動とその理由に、俺は啞然とする。
「だって、健くんと一緒に出掛けられる日は、今日が最後かもしれないから」
姉のその言葉で、過去に自分の身に起きたことを思い出す。
俺は思わず姉の言葉に納得してしまい、姉の提案を受け入れる。
「わ、わかった。ただ、そういうことはこれからは事前に言ってほしい」
「そこはごめんね。今後は気を付けるよ」
「お願いするよ。あと俺は少々では死なない。あの時だってそうだったし」
俺は姉に諭すように言う。
しかし姉はすごく不安そうな顔をして言う。
「そうだけど。でも、どんな形でもいいからわたしは、1秒でも長く健くん一緒にいたいの。その気持ちはわからなくてもいいから、知っててほしい」
「?わかった」
姉の言葉に、俺は戸惑いながらそう返す。
すると姉はまた嬉しそうな顔になり、俺に言う。
「じゃあ今からデート行くことが決まったことだし、デートの支度してくるね。健くんも準備してね」
そういって姉は自分の部屋に戻っていく。結局意地でも姉は今回のお出かけをデートにしたいのか。
そう思いつつ、俺は部屋のドアを閉めて、姉と出かける準備をする。
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