ホワイトウォッチーズ危機一髪!?
つとむュー
第1話 ヒーローショーで危機一髪?
私の名前は
最近、夢中になっているアイドルがいるの。
それはホワイトウォッチーズという女性三人組なんだけど、三人が着けてる白い時計がシンプルなのにキュートで思わず欲しくなっちゃう。
それよりもすごいのはね、三人のパフォーマンスなんだ。三人のダンスがピッタリ合ってて、すごく気持ちがいいんだよね。それを観るだけでもチケット代を払う価値があると思ってる。
えっ、そんなアイドルをどうやって見つけたのかって?
実はね、メンバーの一人の弟さんが高校のクラスメートなの。
これは内緒なんだけど、二年生に上がって今のクラスになってから西凪くんのことがずっと気になってて、どうしたら彼と話すことができるんだろうって困っていた時に、偶然友人からお姉さんが地下アイドルやってるって聞いたんだ。
その時、これはチャンスって思っちゃった。だって、ホワイトウォッチーズのこと詳しく知りたいって言えば、西凪くんとお話することができるでしょ?
そのためには、ホワイトウォッチーズの基本情報は頭に入れとかなきゃだよね。だってお姉さんのこと全く知らないのに、もっと知りたいって言うのも変だもん。ネットで調べたりライブ行ったり、動画を観たりして必死に勉強したんだから。そしたらいつの間にか沼にはまっちゃって……。
何が魅力かって言うと、まずはシンプルな可愛らしさよね。
観客席から見てセンターがぷらっちさん、右がキンカさん、そして左のシルフィさん。三人三様の可愛らしさなんだけど、銀髪色白のぷらっちさんはクールだし、金髪で小麦肌のキンカさんは活動的、そして緑髪でちょっと耳先に特徴があるシルフィさんは魔性的な雰囲気を醸し出している。ちなみに気になるクラスメートの西凪くんは、シルフィさんの弟なの。
そして、その三人が繰り出すパフォーマンスが最高なんだ。個性的な三人なのに、なんでこんなにダンスがピッタリ合うのかって思っちゃう。それが軍隊的なシンクロでないところがいいんだよね。
ほら、軍隊の行進って手の先までピッタリ合ってて、失敗しちゃいけないって緊張感があるじゃない。でもホワイトウォッチーズは三人が適当に踊っているようなラフさがベースにあって、それでいてポイントになるところではピタリと息が合ってるの。それがなんか気持ちいいんだよね。
そうそう、先日西凪くんから聞いたんだけど、最近ホワイトウォッチーズは、ショッピングモールの中庭ステージでやってるヒーローショーに出演してるみたい。地下アイドルは大変だよね、全国ツアーとかがあるわけじゃないから、こういうローカルな興行も重要になってくる。
そのショーの名前は『ホワイトウォッチーズ危機一髪!?』。
ホワイトウォッチーズがライブをしている時に、突然怪人が現れて暴れ出すって内容らしい。
最初、西凪くんからその話を聞いたとき「何それ?」って思っちゃった。
だからわざわざ日曜日に都内まで観に行ってみたんだ。
電車に乗って、それから地下鉄に乗り換えショッピングモールがある駅で降りる。地上に出ると、目の前に大きな建物がどーんと私を待ち構えていたの。
飲食店や専門店街、フードコートも映画館もある。建物も三つもあって、中庭ステージはそれらの建物に囲まれていた。まあ、私たちの町にも郊外に行けばこんな感じのショッピングモールはあるんだけどね、規模は三分の一くらいだけど。
ホワイトウォッチーズのヒーローショーは午後の一時から。
私はフードコートで軽く昼食をすませ、三十分前に中庭ステージに到着した。すると、すでに観客席の三分の二は埋まっていたの。
「すごい人気ね……」
私みたいな女性一人のお客はあまりいなくて、ほとんどは子供連れのお父さんたち。きっと、お母さんたちがショッピングしている間の子守りを頼まれているのね。
ショーが始まる頃には席はすべて埋まっていて、席の後ろには立ち見客が並んでいた。
すると聞き慣れた音楽が流れ始めたんだ。それは『白い時計にドッキドキ』。ホワイトウォッチーズの代表曲で、曲に合わせて三人がステージに登場した。
「待ってましたぁー!」
思わず私は叫んでいたの。
でも、ノリノリで観ているのは私だけで、周囲の子供やお父さんたちは冷めた目をステージのパフォーマンスに向けている。
おいおい、ホワイトウォッチーズのダンスだよ? しかも代表曲『白い時計にドッキドキ』じゃないの。サビのところのシンクロが見事な神曲だっていうのに、あくびなんてしてんじゃねぇよ、と叫びたくなったところで、子供たちの瞳が輝き始めた。
おっ、君たち。やっと気付いたんだね、あのシンクロの素晴らしさを。
と思ったら、子供たちは全然違うことを叫んでいる。
「あっ、トカゲ怪人だ!」
「お姉ちゃんたちをやっつけちゃえ!」
ステージを見ると頭がトカゲの怪人がステージに現れ、武器のようなロープをブンブンと振り回している。
ちょ、ちょっと、何邪魔してんのよ、せっかくのホワイトウォッチーズのステージなのに。
「あっ、危ないっ!」
刹那、怪人が振り回すロープが彼女たちに襲い掛かってきたんだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます