一葉との再会

「何か一葉ちゃんがミモザに通ってるらしいです」

「ミモザ?何で?」

「一葉ちゃんが働いてる所に来るお客さんがオーナーしてるらしいですよ。だから、最近ちょくちょく来てるみたいです」

「俺、ちょっとタバコ買ってきます」


代表に言って店を飛び出した。

この時間ならいるかも知れないと思ったから……。

運命だな。

一葉は、ミモザに行く途中だった。


「一葉、ミモザに行ってんの?」

「あっ、うん」

「ミモザに行くなら、こっちに来いよ」

「えっ、やだよ」

「いいから、今日はミモザに行くのやめて店に来いって」


一葉の腕を引っ張る。

ミモザに取られたくないとかじゃない。

一葉が俺の知らない場所で笑ったり怒ったりしてるのが嫌なんだ。

俺の知らない顔を誰かが見るのが嫌なんだ。


それにミモザには最近一葉と同じ年の人が入ったと聞いた。

名前は、啓大けいた


「一葉、行くぞ」


一葉の腕を引っ張った時だった。


「一葉ちゃーーん。迷子になった?」


子犬みたいな男が近づいてきた。

勝てない。

こいつに俺は勝てない。


「凛音君、私行かなきゃいけないから……。離して」

「嫌だ……」

「凛音君……?」


小さな声で嫌だって言った所で一葉に聞こえるわけがなかった。


「引き留めて悪かったな」

「うん、じゃあね」


無駄なプライドが邪魔をして俺は一葉を引き留める事が出来なかった。

一葉は、啓大の所に走って行く。


「ごめんねぇーー。じゃあ、行こう」

「うん。行こう、行こう」


ニコニコと一葉が笑ってる。

あの笑顔は俺のだったのに……。

俺だけのものだったのに……。

ガンッ……。

タバコの自販機を殴る。


これが一葉と会った最後だった。

結局、俺はプライドを捨てれずに一葉に連絡は取れなかった。


それで、贖罪みたいにあの日の一葉と同じ年齢の女の子と付き合っては別れてを繰り返してる。

一葉は、俺の自尊心を満たしてくれた。

それと同時に、俺の内側にある感情を揺さぶり続ける人だった。


牧人に言われた時だって、あんなに剥き出しに怒る必要なんてなかったんだ。

だけど、一葉はそうさせるものを持っていた。

一葉は、どれだけ言ってもいなくならないって信じてた。

だから……俺は……。

あんなに剥き出しの感情をぶつけたんだ。

後にも先にもあんなに気持ちをぶつけたのは一葉だけだ。


一葉だけだったのに……。

俺は……。


「今月で辞めさせて下さい」

「そうか。わかった。で、何するんだ?」

「近所の弁当屋で働きます。配達の仕事で」

「そうか!わかった。頑張れよ」

「はい。お世話になりました」

「最後の1ヶ月頑張ってくれ」


俺は、一葉に言った普通になろうと思った。

遅いなんて事はない。

いくつになったって、今からだって変われるんだ。

だから……。





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