14 運動会当日
運動会当日。
我がクラスが配属された赤組のTシャツへと着替えた私は、いつものように文音と一緒にいた。
「ほら碧! 写真とろ写真! はいピース!」
覆いかぶさるように文音が私との写真を撮ると、どうやらそれを斉藤波瑠さんへ送るらしく「碧、波瑠兄に送ってもいい?」と聞かれてしまった。
私は「はい、問題ありません」とだけ答えると、今日の日程表を見た。
・開会式
・男子騎馬戦
・女子騎馬戦
etc……。
「まずは男子騎馬戦ですか……私、上月くんの応援をしなければなりません」
「え? 上月くんって騎馬戦騎手なの?」
「はい。先週そのようにお聞きしました」
「そっかそっか碧も騎手だし、お似合いだね!」
文音はニシシと笑い、続けて「じゃ校庭行こうか!」と私の背を押した。
∬
学園長による挨拶、選手宣誓などが終わり、開会式を終えた。
そして私と文音は上月くんの応援をしようと男子騎馬戦の観戦へ行く。
「お、上月くんも赤組みたいだね! 良かったじゃん碧」
「はい。大手を振って応援できますね」
私がそう言うと、文音が「おおーい上月くーん頑張れー」と声を上げた。
「ほら碧も!」
文音に請われ、私も懸命に声を上げた。
「はい……。上月くん、頑張ってください!!」
その声に上月くんもこちらに気付いたらしく、小さく手を振って答える。
騎馬が組まれ、男子騎馬戦が始まった。
思ったよりもすごい速さで動く騎馬。
赤組が鶴翼の陣を敷き、迫ってきた白組の騎馬を囲むように動く。
赤組中央にいた上月くんが敵に補足され、腕を組み合い始めた。
しかし白組は鶴翼に囲まれるようになり分が悪く、前と左右から赤組の攻撃を受け、どんどんと白い鉢巻を奪われていく。
白組の先頭集団がほぼ鉢巻を奪われ、上月くんは無傷のまま生き残っていた。
「やった……! 赤組つよーい!!」
文音が興奮してか飛び跳ねる。
「はい。赤組の作戦勝ちのようです」
残る白組の騎馬たちも取り囲まれてどんどん殲滅されていく。
結果。競技時間の5分としない内に白組は完全に殲滅されてしまった。
判定は赤組の圧倒的勝利だ!
「流石ですね……」
私が勝利を褒め称える。
「碧、次は碧の番じゃん! 騎馬戦頑張ってきてね!」
「はい。できる限り頑張ります」
文音に応援され、私は騎馬戦参加メンバーの控える陣へと向かった。
騎馬役のクラスメイト女子に「あ、きたきた藤堂さん!」と声をかけられる。
「はい。皆さんよろしくお願いします」
ペコリと頭を下げ、赤い鉢巻を受け取るとそれを頭に身に着けた。
そして3人に担がれる私。
暫くして、女子騎馬戦が開始された!
合図とともに男子と同じく鶴翼の陣を敷こうとする赤組。
しかし男子ほど機動力がないからか上手く陣形を敷くことが出来ない。
それに加え、相手も機動力がなく突出してこなかった為、縦型陣形vs縦型陣形のような戦いとなった。
私は中央右翼に位置し、敵とぶつからんとしている。
前方を見ると、なんと……白組の相手は下月都恋ちゃんだ……!
「そのまま……前へ進んでください!」
都恋ちゃんが騎馬にそう告げて、私へと向かってくる。
「藤堂さん! 決着を付けましょう!!」
そう言い放ち、私の鉢巻へと右手を伸ばす都恋ちゃん。
しかし私もそう安々と鉢巻を奪われるわけにもいかない。
都恋ちゃんの右手を迎撃するように、自身の右手で彼女の右手を掴んだ。
続けて左手を差し出してくる都恋ちゃんに対して、同様に左手を掴み、取っ組み合いの形になる。
「引いてはくれませんか藤堂さん……!」
言いながら都恋ちゃんが押してくる。
私の騎馬たちがなんとかそれに耐えると、今度はこちらの番とばかりに前に出てくれた。
「どういう意味ですか下月さん……!」
必死に都恋ちゃんの腕を押して耐える私。
「どうもこうもう零一さんとのことですわ!」
「今はそんなことを言っている場合では……!」
「いいえ、良い機会です。この戦いで負けた場合は、零一さんとの交際を解消して頂きます!」
一方的にそんなことを言い放つ都恋ちゃんに私は「そんなこと……私達だけで勝手に決められません……!」と対抗する。
完全に取っ組み合いの痴話喧嘩に発展した私と都恋ちゃん。
私の騎馬の3人が「え? どういうこと?!」と私に混乱しながら質問する。
「下月さんが勝手に言いだしたことですので、気にしないでください……!」
そう言って右腕を押し出す。
すると都恋ちゃんがバランスを崩した。
ここだ!
私は組み合っていた左手を離すと、都恋ちゃんの白い鉢巻をさっと奪い取った!
「くぅ……!」
うめき声を漏らしながらも鉢巻を取られたので騎馬を降りる都恋ちゃん。
私は勝ち誇って、「私の勝ちですので、引いてもらっても構いませんよ下月さん!」と言ってやった。上月くんも迷惑しているようなので、いい加減に下月さんには他の男子生徒を当たって貰いたい。
「ゆ……許せませんわ……! 上月家の財産は私の人生にとって必須級です!」
と私を睨みつけた。
しかし私には都恋ちゃんとにらみ合っている余裕はない。
「さぁ他の方を助けにいきましょう!」
私がそう指示すると、「おっけー!」と中央で取っ組み合っている生徒を挟撃しようと騎馬がのそのそと向かっていった。
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