第二話∶合縁奇縁

「あー、初期スポーン運なかったか。」

彼が異世界に降り立つと、そこは森だった。「ま、いいか。妹いるし。」

彼はワクワクルンルンで妹に話しかけられるのを待った。(ここは、先に話しかけてもらいたいな♡)乙女のようにそう思って。

そして4日がたった。

「おい、大丈夫か。」

「イモウト!?」

「ダメだ、錯乱している。しっかりしろ!!」

「イヒッ、イモウトッ、イモウトッ」

「俺はお前の妹じゃねー。」

「オ……オトコ?」(ばたん)

「し、死んだ……?いや、まだ生きてる。街に連れてかねぇと!!」

彼の名前はアストルム。男の娘冒険者である。そして彼の受難はここからはじまるのだ。


「ハッ」


「気がついたか。死んだかと思ったぜ。」

目が覚めると、そこには可愛らしい子がいた。

「そうか、君が僕の妹か。」

「何言ってやがる。俺は男だ。そもそも妹になりゃしねーよ。お前が誰かも、知らねーしな。」

「男……?、……!?」

「ははっ、カワイーだろ?一応この街の女全員にはカワイさで勝ってるぜ。」

フリフリのスカートも、ぴょこんと愛らしいツインテールも、ひょっこり覗く八重歯も全て美少女にありがちだというのに男である。筆者は大変よろしいと思う。読者の君たちもそう思うだろうが、キョウタは妹グルイの女グルイなのでただ属性のムダ遣いにしか捉えなかった。

「はぁ(ため息)それより僕の妹は何処ですか?」

「妹?いや、お前の周りに人は居なかったな。あ、そういえばそこの大剣。落ちてたから持ってきてやったぞ。すげー軽かったけど、これが異世界人の神器ってやつか?」

「神器……妹?」

【ニィサマ……ニィサマ……】

「妹の波動を感じる……」

(妹の魂でも封じられてんのか?いや、なら呪いの武器特有の感じがあるはずだ。それにこの剣からは何も感じられねぇ。)

「ああ、我が妹よ。なんと美しい姿か!」


それは 妹と言うには あまりにも大きすぎた 大きく ぶ厚く 重く そして 大雑把すぎた それは 正に 鉄塊だった


とどのつまり我々で言う斬馬刀、ドラゴン殺しといったバカ大剣である。扱える者のない、ロマン砲だ。少なくとも妹ではない。そのはずだった。

「かわいいね。ふふ」

(可哀想に。女神に呪われたのか、妹はこんな姿に。兄はすっかり狂って、剣にキスしまくる始末。ガチで不憫だ)

何も感じられないのはそのはず。妹は大剣だが大剣は妹ではないからだ。要するにキョウタは狂人。しかしアストルムは、いや、誰でも目の前の人間が狂人だと信じたくはないだろう。故に彼は神の万能性にすがったのだった。

「なぁ、異世界人だろ?一緒に来ねーか。俺が世界を見せてやる。」

「ありがとう。恩に着るよ。」

「いいってことよ。俺の名はアストル厶。」

「僕の名はキョウタ。城島キョウタだ。」

そして二人の少年は固く友誼を結んだ。彼らの旅はここから始まるのだ。

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