-第9節-



 その日は雪が降っていた。メイザースはメルカトールと待ち合わせ、2人で須恵町にある遊具がほぼ全て撤去された、不毛の大地とでも言うべき公園に来ていた。勿論、フランチェスカと会うためである。


「なあ」メイザースはまっすぐ前を見て言う。そこにはなにもないというのに、彼女はずっと見据えていた。「メルカトール、覚悟はできたな」


 メルカトールは自分が思っているほど頭の回転が悪くなかったし、むしろ自分の立場と主張を理解することに長けていた。だからこそ、メルカトールは生まれて始めて、立場ではなく主張を、正義だけを掲げることにした。「ええ、私はやれる。やれるよ。私の想いを、フランチェスカにぶつける」


 暫く、メイザースは寒さに震えていた。メルカトールはピンと背筋を伸ばし、凛とした表情で震えもせず立っていた。それを見てメイザースは、あゝ、それでこそ魔法少女だ。と思った。


 そしてフランチェスカが、降りしきる雪の中、降り立った。「……メルカトール、来たわ。世界は私の運命を追い越した。だから、終わらせに来たの」一挙手一投足が見目好く動く。左腕を胸の前に伸ばし、右腕は下ろしながらも、どんな行動にも対応できるよう、あくまで自然に構えていた。


 対してメルカトールの動きはあどけなくも綺麗なものであった。両腕を前にピンと伸ばし、腰を少し落として自分の全力に身体が耐えられるよう構えていた。


 そして2人は、ガンマンの決闘のように刻を待った。と言っても、フランチェスカは攻撃に応じる構えを取っていたため実質メルカトールがいつ動くか、であった。少ししてメイザースは気がつく。あゝ、2人は私が巻き込まれないよう、全力でやるつもりか。だから私が避難するまで待っているのだな。そうしてメイザースは2人から視線を外し、近くの行きつけの喫茶店へ行くことへした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る