いつかの鬼ヶ島
有馬アキラ
第1話
昔々、遠い島に、見た目は怖いが心優しい鬼たちが住んでいました。
彼らは大きく毛むくじゃらの体を持っていましたが、優しさと親切心にあふれていました。
ある日、漁師が島に漂着しました。鬼たちは彼らに酒や食事を振る舞い、楽しい一晩を提供しました。
またある日は、近くの村が水害に見舞われると、彼らは自らの強靭な体を使い、堤防を築くために木を切り倒しました。村人たちが感謝の印として米俵を差し出すと、鬼たちは「困ったときはお互い様じゃ。お前たちも大変じゃから、気持ちだけでいいんじゃ」と言って、大きな口で笑って島に帰りました。
ある日、大きな豪華な船が鬼たちの島に漂着しました。
船には、年老いた貿易商と彼の小間使いのように見える男が乗っていました。彼らは嵐に遭い、乗組員を失って食料も尽きかけていました。鬼たちは二人を助け、世話をしました。商人は弱っていましたが、小間使いは回復しました。老商人は、「死んだら、私の墓をこの島に建ててほしい。船の積荷を皆さんに差し上げます」と言いました。鬼たちは承諾し、老商人が亡くなった後、彼の墓を建て、彼の遺品を並べました。
十数年後、桃太郎と名乗る若者が、犬、猿、キジを連れて島にやってきました。
彼は実は老商人の小間使いの子供で、父から鬼と老人の宝の話を聞かされていました。桃太郎は鬼たちに宝を要求しましたが、鬼たちは宝を持っていないと答えました。桃太郎は鬼たちを攻撃し、鬼たちは防戦しました。桃太郎は老商人の遺品を奪い、崖から飛び降りて逃げました。鬼たちは悲しみ、丘の上で泣きました。
長い年月が流れ、鬼たちは変わりました。毛は抜け落ち、額にはタコのようなふくらみができ、皮膚は太陽で真っ赤に焼けましたが、彼らの目は変わらない優しさを保っていました。
しかし、彼らは人間との接触を避けるようになり、静かに島で暮らし始めました。彼らの話は次第に伝説となり、人々は彼らを恐れるようになりましたが、鬼たちの心は変わらず、互いに支え合い、島の自然と調和して生きていました。
ある日、鬼たちの島に新しい訪問者が現れました。
一人の若い女性が、探究心を持って島を訪れたのです。彼女は鬼たちの伝説を聞き、真実を探求したいと願っていました。鬼たちは最初警戒しましたが、女性の純粋な好奇心と優しさに心を開き始めました。彼女は鬼たちと時間を共有し、彼らの真の姿を理解しました。
女性は島を去るとき、鬼たちと深い友情を築いていました。
彼女は世間に鬼たちの優しさと力強さを伝えるため、彼らの物語を広めることを誓いました。彼女の話によって、人々の間で鬼たちへの見方が少しずつ変わり始めました。恐れと誤解に満ちた伝説が、共感と理解の物語へと変わっていきました。
鬼たちも、彼女の訪問によって、再び人間との繋がりを大切にするようになりました。彼らは島を訪れる人々に対して、かつてのように親切に接し始めました。
島と鬼たちは、再び温かい心を持つ場所として知られるようになり、人々は鬼たちから多くのことを学びました。そして鬼たちは、かつての悲しみを乗り越え、新たな希望を見出すことができました。
こうして、鬼たちの島は、異なる存在が互いに理解し合うことの大切さを教えてくれる場所となったのです。
いつかの鬼ヶ島 有馬アキラ @hiro_aritomo
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