カメラ切り忘れて半裸の超美麗3D動画を公開したV
椎名富比路@ツクールゲーム原案コン大賞
超美麗3D配信
「ではオタクに優しい隠れオタ系Vチューバーのティナマルでしたー。またねー」
ウチは、ヘッドホンを外す。
はあ、疲れた。まだ、ノドが痛い。
今日は『登録者一万人 超美麗3D耐久歌枠』をやった。早朝から初めて、深夜〇時を超過していた。最後の方になったら、底辺のグチになっていたな。
凸でデュエットしてくれた周りのVは、みんな『案件が入った』とか、『一緒にお茶した』とか言っている。
ウチは一晩中、スマホの巡回だ。ネットサーフィンしか、することがない。『ネガティブな記事はメンタルに悪い』と有識者は語るが、一度足を踏み入れると歯止めが効かなくなる。
低所得者層を糾弾する記事が、よく目に入った。
「自分は彼らとは違う。好きなことを仕事にしたんだから」と思いつつ、結局は彼ら以下の生活である。儲けなんて微々たるもので、カツカツだ。稼ぐなら、バイトをしたほうがマシである。
これが、個人勢から始めたVの限界か。
歌だって、本当はオリ曲を歌いたい。自分で作りためた作品が、たくさんあるのだ。でもPVを作る手段がない。Vアバターのママに頼もうにも、先立つものが必要だ。頼むノウハウだって、知らない。企業勢なら、もう少しスムーズなのだろうか。
入浴のため、服を脱ぐ。
「あ~あ。このままど底辺なのかな~♫ 今日もスマホ巡回~♪」
泡立つバスボムを投下し、湯船を泡風呂に変える。
スマホを防水パックに入れて、歌いながら湯に浸かった。
「下着は、二日前のまま~♫ 湯船にスマホを落としかけ~♫」
わざとピントを外しながら、歌う。その方が、ストレスが吹っ飛ぶのだ。
「ストレスフルな職場から逃げたのに~♬ どうして、こんなにつらいの~♪」
はあ、とため息をつく。
「……ん?」
スマホで動画閲覧でもしようかとしたとき、異変に気づいた。
コメント欄が動いているではないか。
『入浴中だと!?』
『素っ裸なん!?』
『歌が素敵!』
『共感できますなあ』
同時期にデビューした個人Vまで、コメントしてきている。
「なに!? 部屋まで響いてたの!?」
くそ。各ドアを開けっ放しにしていたのが、いけなかったか。
適当に体を拭き、マイクをオフにした。
夜は怖いので、いつでもダッシュで逃げ出せるようにすべてのドアを開放してあるのだ。
そのせいで、歌が漏れていたとは。
「あわあっわ!」
泡だらけになりながら、急いで湯から上がった。泡を落とすため、シャワーを浴びる。
にしては、盛り上がり方がハンパな……!?
しまった! カメラが回ったままだ! 超美麗3Dのまま配信してるじゃん!
「違う違う違う!」
カメラの方も、ちゃんとオフにした。
翌日、ウチの動画はバズっていた。
ニュースサイトにまで、取り上げられてしまう。
下着や局部など、デリケートな部分は絶妙に見えていなかった。
それにしても、ほぼエロだったのに広告が剥がされていないってどうよ?
カメラ切り忘れて半裸の超美麗3D動画を公開したV 椎名富比路@ツクールゲーム原案コン大賞 @meshitero2
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
同じコレクションの次の小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます