第7話 偽りの親友
(まあ、そういう女教師だから鈴本さんの相談をしたくないんだよね……)
とはいえ、私ひとりで鈴本さんを守るのも限界があり、さすがに先生に言うしかなかった。
*
後日、職員室に呼ばれた私が言われた言葉は、耳を疑う物だった。
「天城さんは、委員長なんだから鈴本さんの親友になりなさい。仲良くなれば孤立しないでしょ?」
さも当然、さも名案とばかりに引田先生が私に告げる。
(は? 何言ってんだこのアマ? 寝言は寝て言えよ?)
思わず、ブラックな私が出てきてしまう。
(大体、委員長なんだからってどういう理屈なんだろう?
そして、親友って誰かに命令されてなるものなの?)
私は、あまりの衝撃でめまいを覚える。
私にはすでに、クラスの中にミユキちゃんという小学校からの親友がいる。
絵が得意で、一緒に同人誌を作るほどの仲だ。
バスケ部をやめてしまった私は、ミユキちゃんに誘われて、今は美術部にいる。
そのミユキちゃんがいるのに、いじめられている鈴本さんと親友になれと??
(今までも、それなりにフォローはしていたのに、それ以上に何をしろと? ふざけんな!)
私も、池田君のように言ってしまいそうになったが、さすがに教科書で殴られている姿をが頭をよぎり、大人しく「がんばってみます……」と、言って私は職員室を後にした。
*
私は、とりあえず出来る限り鈴本さんに声をかけてみることにした。
確かに、ひとりでいることが多いし、気にはなったからだ。
ただし、親友になるかどうかは別だ。
ただのクラスメイトから、友人や親友になれるかどうかは会話をしてみないことには始まらない。
「鈴本さん、いつも何か書いてるけど、何書いてるの?」
鈴本さんは、休み時間はいつもノートに何か書いている。
漫画や小説を書くことが好きなら、共通点があるかも知れないと思った。
「あの……オリキャラを描いてるの」
「そうなんだ? 見せて?」
いいよと、見せてもらったのは、私が思っていたものとは違っていた。
「これが、血を吸うと性格が変わる
オリキャラの設定を嬉々として語り始める鈴本さん。
いつもより声も大きいし、熱心だ。
けれど、それに反比例して私のテンションは下がっていく。
(思っていた創作と違う……。ジャンル違いだ……)
デフォルメされて目が大きい
「この二人は、仲が良くていろんな人の血を吸うのね。そうすると色々性格が変わるの、すごいでしょ!」
「あ、うん。お、面白い設定だね……」
私は、それ以上何も言えなかった。
私が好きなのは、キラキラとした少女漫画であり、基本恋愛物が好きだ。
ギャグ漫画やダークヒーロは好きではないのだ。
試しに、私も自分が描いているスケッチブックを見せてあげた。
目の中に星がある少女漫画の女の子が無数に描いてあるスケッチブックだ。
「これは、シュシュの恋愛漫画の真似で、こっちのは花とゆきのファンタジーの真似なの。で、これがオリキャラの男装の麗人のレンね」
私が、鈴本さんに説明すると明らかに引いている。
「そ、そうなんだ。絵、上手だね……」
お互いの創作物を見て、これ以上の関係にはなれないことだけはよくわかった。
こうして、2学期はそれなりの現状維持で終わろうとしていた。
しかし、そうは行かなかった。
私は担任の引田先生に職員室に呼び出されたからだ。
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