第6話 ヒステリックな女教師



 私の中学のクラス担任は引田先生といい、ぎりぎり30代位といった感じの女性の国語教師だった。


 彼女は、少し気分屋で依怙贔屓えこひいきが強いところがあった。

 ちょっとカッコいい、気に入った男子生徒には猫なで声で呼んだり、やたらと褒めて頭や背を触ったりする。


 セクハラだと思う。


 小学校で同じクラスだった足が速くて見た目もカッコイイ池田君などは先生のお気に入りで、やたらと褒められたり触られたりし、気持ち悪がっていた。


「あの先生、俺や勝地かつぢに色目使うだろう? 気持ち悪いんだけど」

「それは分かる……。見てるこっちも不快だけど、私や田辺君委員長ではどうにもできないし……。みんな池田君が嫌がってるの分かってるから、がんばって」

「何をどうがんばれって言うんだよ。天城、なんで、俺たちは先生運がないんだ??」


 池田君と勝地かつぢ君は、小学校でも同じクラスだったから、呼び捨てで呼び合うくらいの仲ではあったが、中学になってまで呼び捨ては恥ずかしいような気がして、君付けで呼ぶようになった。

 少し煩わしいけれど、特定の男子と仲が良さげというのも女子の間ではあまり歓迎されないため仕方がない。


「俺はイケメンじゃないから、あの先生にかまわれないけど、ああいうあからさまなのは嫌だよな」


 一緒に聞いていた男子のクラス委員長の田辺君が言う。

 田辺君は、四人兄弟の長男だとかで面倒見がよく、非常に頭がいい。

 私とは違い、しっかりと人望でクラス委員長になったと後から知った。


「マジでゾワゾワするんだよ!」


 池田君は、本当に嫌そうに腕をさすった。


   *


 結局、池田君はその後、授業中に引田先生が猫なで声で褒めちぎって肩に触れようとしたとことで、我慢の限界に達し授業中にブチ切れて暴言を吐く。


「そういう声で旦那だんな誘うんだろ? キモイんだよ!」


 ギョッとしたが、同時に『よく言った、池!!』と心の中で拍手した。

 それは、たぶんクラス全体の総意だった。


 しかし、引田先生は顔を真っ赤にして『子供のクセになんてこと言うの!』と、ヒステリックにわめき、教科書で池田君の頭を全力でボカボカと叩き廊下に追い出した。


 二度とかまわれないと確信したのだろう。


 追い出された池田君は清々した顔をしていた。

 

  

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