第5章 掃除婦ナオミ
アズサが従業員食堂に入っていくと、小太りな娘がマンジュウを並べて食べている。アズサに好意に満ちた笑顔を向ける。
「あ、あなたアズサさんでしょ?あたしナオミ。お掃除担当しているの」
同世代の二人は、たちまち意気投合して、二人でマンジュウを食べ始める。アズサがマンジュウを食べたがら食堂を見回す。
「なんか人少ないね。アルバイトって、あたし達だけ?」
「うん。今はね。まだシーズン始まってないから。これからドンドン増えてくるらしいけど。ねー、タカシさん?」
ナオミが3つほど向こうの机に座っているタカシに声をかけた。タカシは色んなものをボロボロと落としながら、マンジュウを食べることに苦闘しており、ナオミに声をかけられてビックリしている。
「えっ!なに!?」
「アルバイトもお客さんも、これから増えるんでしょ?」
よく見ると、タカシの口の回りが白い。
「うん。来週あたりから8月末まで、すごーく増えるよ」
タカシが口の回りを白くしながら微笑して、マンジュウとの格闘を再開する。ナオミが小声でアズサに話しかける。
「あの人、タカシさん、去年の夏から冬通しているの。冬は上高地閉じちゃうからさ、冬通してアルバイトしてくれる人ってなかなかいないの。だからあの人がアルバイトの一番上なんだけど、なんか、いつもボーッとしてるのよねー」
アズサがうなづく。
「主任にも言われた。気をつけてねって」
タカシはマンジュウを食べるために苦闘している。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます