クロヒゲ船長を救出せよ
あーく
クロヒゲ船長を救出せよ
それは、とある海賊たちがお宝を求めて大海原を航海しているときの出来事でした。
別の海賊たちが船上に乗り込んできて、襲われてしまいました。
そんな中で立ち上がったのが、クロヒゲ船長でした。
「貴様ら! この船には宝がない! もし、それでも命を奪うというのなら私を人質にしていけ! ここの乗組員たちに手を出したら許さないぞ!」
こうして、クロヒゲ船長は人質にされ、敵の船に連れていかれてしまいました。
ここで黙っている乗組員たちではありません。なんとかクロヒゲ船長を助けようと計画を立てることにしました。
囚われた船長の元に、気付かれないように小型のボートで少人数で向かいます。
こっそりと敵の船に乗り込むと、船長を探しました。
すると、薄暗い物置にクロヒゲ船長はいました。
なんとタルの中に押し詰められており、頭だけが飛び出ている状態でした。
タルの中は窮屈で、身動きができないようでした。
「キャプテン・クロヒゲ! 大丈夫ですか!」
「ああ、大丈夫だ。捕まってしまったが命は無事だ。それにしても、お前たちよくここまできたな。えらいぞ」
「へへへ…。しかし、どうやって助けましょう?」
そこで一人の部下が提案をしました。
「いい案があります」
クロヒゲ船長は感心します。
「ほう。それはどんな案だ?」
部下は得意げに言いました。
「タルに……この剣を刺すんです!」
「…………え? なんて?」
「なんか、そんな気がしました。タルに剣を刺したらなんだかんだで脱出できる気がします」
「まてまてまて。おかしいじゃん。中に俺が入ってんだよ? 俺が刺されちゃうよ? 俺死んじゃうよ?」
「いや、でも、なんか、剣を刺したら『痛ってー!』とか言って飛び出すとかなんとかで……」
「そんなギャグ漫画みたいなこと期待されても困るよ。もっと建設的な案出して?」
部下たちは悩みました。
「じゃあ、一人ずつ刺していきましょう」
「まず刺すなっつってんの。俺に刺さっちゃうじゃん」
「じゃあ、まずは私からで」
「聞けって、おい」
部下の一人はタルに剣を刺しました。
しかし、船長がタルから出てくる気配はありません。
「おっかしいなー」
「おかしいのはお前らの頭だよ。なんで刺しちゃうの? そんなんじゃ出られないっつってんのに」
「じゃあ、次は私で」
「何回やっても同じだから」
しかし、タルに剣を刺してもやはり船長が出てくる気配はありません。
部下たちは首をかしげます。
「『あっれー?』じゃないんだよ。いま狭いタルの中で必死に避けてるからね? 俺のこの頑張りがお前らには分からんだろう」
「じゃあ、次は僕の番で。いやあ、ドキドキしてきたなー」
「俺もドキドキしてきたわ。そろそろ死ぬんじゃないかって。ってかそろそろやめない? 解決法がおかしいことに気付いて?」
三度、タルに剣を刺しましたが、船長はやっぱり出てきません。
「フゥー↑↑↑!」
「あっぶねー!」
「いやー盛り上がってきたなー」
「おおーい!! なんで盛り上がってんだ!! こっちは命かかってんだぞ!! てか何だよ『あぶねー』って!! 助けてくれるんじゃないのかよ!!」
「全員一巡したので、次は私が刺します」
最初に剣を刺した部下が再び剣を取ります。
そして、タルに思いっきり刺しました。
その拍子に船長がタルのフタを壊し、中から飛び出してきました。
すごい剣幕で部下たちを見下ろします。
「お前らいい加減にしろよ。最後に刺したやつだれだ?」
「わ、わたしです。でも、脱出できたので結果オーライですよね?」
「ふざけんな! キサマは3ヶ月間トイレ掃除だ!」
「そ、そんなー!」
こうして、船長たちは脱出に成功しました。
この物語は伝説となり、現代でも語り継がれているとかいないとか……。
クロヒゲ船長を救出せよ あーく @arcsin1203
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