第2話 俺/私の事

その後、まずは自分で歩けるようになる為のトレーニングを続けながらも色々分かった事がある。

俺はどうも軍お抱えの魔術師の家に生まれたらしい。


父親の名前はエルヴィン・シャーロット。高身長に黒髪が映える、少しばかり口髭を蓄えた中々の色男だ。家での会話を聞く限りはそれなりに魔術の腕にも自信があるらしい。割と忙しいらしく、帰るのは遅くなる事も多い。歳は多分30行くか行かないかってとこだな。


母親の名前はエリナ・シャーロット。所謂専業主婦ってやつだ。少し抜けている所はあるが、俺やエルヴィンへの愛情は伝わる。中身がこんなおっさんになっちまった事を申し訳なく思うくらいだ。顔立ちも整った可愛らしい系の美人さんで、胸もデカい。授乳の度にちょっとドキドキしてるだなんて絶対言えない。年齢はエルヴィンより若く見える。


そして肝心の俺の名前は、リーゼ・シャーロット。父親の優性遺伝子を打ち破り、エリナの美しい金髪を受け継いだらしい。2人に溺愛されながら健やかに成長中だ。



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俺が生まれ変わってから1年は経った頃、流石にまともに歩けるようになって来ていた。毎日毎日ベッドの上で体を動かす練習だけを繰り返す日々は本っ当に退屈だった。一体どれだけの時間をふて寝に費やしたか分からない。


そんな事情もあって、俺は積極的に家の中を探索してまわるようになっていた。外へはエリナが出してくれなかった。…ああ見えて怒ると怖いのだ。そこで改めて気付いたのだが、やはり俺の生まれた家庭は当たりだ。親ガチャ大成功って所だ。裕福そうだし、何より家の本棚には魔術や魔物、兵法や虫魚に至るまであらゆる分野の学術書が置かれていた。お陰で俺はこの幼年期を退屈する事なく過ごす事が出来たのだ。エリナには意味も分からないのに難しい本と睨み合う謎の習性と認識されていたらしいが…。



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更に誕生日のケーキに乗る蝋燭の数が1本増えた頃、俺はもう普通に発音出来るようになった。会話もそれなりに。流石に話し過ぎると不自然なので抑えてはいたさ。それでも2人は、特にエリナは神童だなんだと騒いでいたが。ただ女の子らしい口調に慣れるのは中々大変だった。まだ1人での外出は許してもらえなかったが、エリナ同伴の下俺は頻繁に外へ繰り出した。


我が家は程よく自然と共存する緑の豊かな街に建っていたので、外での遊びには困らない。俺はクワガタも魚も好きなんだ。特に釣りの腕には自信があるんだぜ?…エリナもエルヴィンも釣りの楽しさを分かってくれないのは遺憾だったがな。

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