第14話 温泉はスルー

 相変わらず変わらない景色が線を引く、どこまで進めばいいのだろうか? そんな疑問を持ちながら香峯子は動く。人のいる場所へ行きたいが、下手に向かうと被害が出てしまうかもしれない。


 だから香峯子は秘境のような、誰にも気づかれない場所に人がいそうな場所を目指す。


「人がいそうで誰にも見つからない場所と言えば……地下ですわね」


 以前地底人世界に行った時を思い出す。


 もしそのような場所があるのなら、一週間平和に過ごせるかもしれない。


 香峯子は速度を落とすと、縦ロールをクッションにして音を立てず地上に降りる。


 そもそも地下に空間があるのか分からない。そのため、まずすることは地に足をつけて地下空間が無いかを確認することだ。


 香峯子は軽く踵で地面を叩いてみる。


「詰まってますわね」


 少し離れた場所で再び叩いてみる。


「温泉がありますわね」


 ちゃぷちゃぷ温かいものを感じるし温泉に違いない。


 いつもだったら温泉を掘っていたが、今はそういう状況ではない。


 もし不躾な輩に身体を見られたとなると、怒りでこの世界を滅ぼしてしまいそうだ。


 香峯子は己の勘を頼りに地下空間がありそうな場所を探しては地面を叩いて確認を繰り返す。


 やがて――。


「この感じ……空間が広がっていますわね」


 地下空間を求めた香峯子は、いつの間にか朽ち果てた木造の建物が並ぶ場所、恐らく集落だった場所だろう。


 朽ち果てた建物には苔が覆っており、道は荒れ果て倒れた木々が行く手を阻む。


 香峯子は引っかからないように集落の中心だろう場所に向かい地面を叩く。


「丁度中心ですわね」


 真下に空間があることを確認した香峯子は、縦ロールで地面を叩き大きく跳躍――縦ロールを鞭のようにしならせ、程々の力で地面を叩く。


 世界を劈く轟音、隠れて移動している意味が無くなるレベルの音を立てて地面が割れ、集落を飲み込んだ。

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