第12話 気持ち悪いですわね

「愛斗さん愛斗さん愛斗さん愛斗さん愛斗さあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん‼ ……っは⁉ わたくしったらなにを⁉」


 目立ってしまうことなど考えもせず、縦ロールを地面に叩きつけて大きく跳躍する香峯子。


 勿論そんな目立つようなことをやっていれば、人に見つかるのは当たり前のことで、気づいた頃には、香峯子目掛けて火の玉や氷の棘が飛来する。


 香峯子は重力に任せて落下。直後香峯子がいた場所で火の玉と氷の棘が激突――打ち消し合う。


「目立ってしまいましたわね。仕方ありませんわ、これも愛斗さんへの愛ゆえ」


 地上には五人の人間がいた。五人は全員が真っ黒いフード付きのローブを被っており、顔が見えない。


 男か女すら分からない人間五人が、落下する香峯子へ再び手を向ける。


 その手に、火の玉や氷の棘がまるで生えてくるよに現れる。そして再び香峯子目掛けて射出する。


 今度は香峯子の落下する位置へ飛んできたため、香峯子も縦ロールを振り回し攻撃を撃ち落とす。


「殺る気が凄いですわね。貴方達が使ってるのは、魔法というものですか? 見覚えがありますの」

「……………………」


 人間達は香峯子の問い掛けに答えず、なおも攻撃を続ける。


「まあ、わたくしを無視して攻撃を続けるなんて、なんて野蛮な方達でしょう――慣れてますけど‼」


 縦ロールで攻撃を撃ち落とした香峯子は、そのまま縦ロールで敵を薙ぎ払う。


 人間達は、紙のように吹き飛ばされ、あまりの手ごたえの無さに香峯子は眉根を寄せる。


「どう考えても人体の感触ではありませんわね」


 紙のように吹っ飛んでいった人間らしきものは、それっきり動かず、ただそこで伸びているだけだった。


 香峯子は警戒をしながら、人間らしきものを縦ロールで持ち上げる。


「軽い……ですわね。触ってみたところ、形は人間ですが――フードが取れませんしそれに……顔がはっきり見えませんわ」


 フードで頭は覆っていても、顔までは覆われないはず。遠目に見たり、動いていれば顔もはっきり見えないかもしれないが、今は止まっており、正面から近くで見ている。


 それなのに香峯子には人間らしきものの顔ははっきり見えなかった。


「気持ち悪いですわね」


 そう言って香峯子が人間らしきものを地面に戻すとその瞬間、人間らしきものが溶けて地面へと染み込んだ。


「全く、なんなんですのこれ?」

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