第6話 魔法と魔術

 使えなくなった父を処理し、たった一人残されたクレリアムは、浮遊魔法を使い大きく空いた穴から外へ出る。


 この世界には、魔法と魔術の二種類がある。


 魔法は、今クレリアムが使った浮遊魔法のように、自身の身体に、又は身体から

『なにか』を起こす。この場合、クレリアムは自分の身体を『浮かす』ということをやっている。


 今クレリアムの周囲に散らばる人間だったもの、その一つである人の燃えカス。それは、魔法を使用した者が身体から『火の玉を出す』ということをやり、それを別に誰かに当てた結果だ。


 それに対して魔術は単純、先程地下でやっていた災厄を呼び出す魔術のように、生贄を使い、『その生贄』でなにかを起こすということだ。


 魔法に比べて、魔術はできることの幅は狭いが、その分起こせることが、魔法とは桁違いの力を持つ。そのため、ほとんどの魔術は禁忌扱いになっている。


「災厄はどこへ行った?」


 地上に降りたクレリアムは、周囲を確認する。災厄は人の姿をしていた、それならあまり遠くには行っていないのではないかと考えたが、相手は世界を滅ぼせる程の力を持つ災厄だ。


「もしや、既に残る人間を抹消しに行っているのか?」


 傀儡にできていないと思っていたが、もしや主人である自分の意向に沿うように動いているのではないか。そんなおめでたい思考をしていたクレリアムは、遂に耐え切れなくなり笑い声を上げた。


「一時はどうなることかと思えば、既に邪魔者の抹消は始まっているんだな‼」


 そしてその時、遠くで煙が立つのが見えた。


「そうかそこにいるのか! 面白い、災厄の力を見せてもらおう!」


 再び浮遊魔法で宙に浮かんだクレリアムは、煙が立つ方向へ飛び立つのだった。

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